
マーケティングのヒアリングシートテンプレート|クライアントの隠れた強みまで引き出す質問項目
ヒアリングは一通り終わったのに、いざ戦略を考えると「あれ、この会社の強みって何だっけ」と手が止まる。聞いた内容を見返しても、事実は並んでいるのに、提案の決め手になる強みが見当たらない——案件の最初でこうなると、その後の提案がまるごと弱くなります。
この記事でわかること
- 「聞いたのに使えない」ヒアリングが起きる理由
- マーケティングのヒアリングシート必須7項目(テンプレート)
- クライアントも気づいていない隠れた強みを引き出す6つの問い
- 集めた声を戦略の素材に変える整理のしかた
- ヒアリングにAIを活かすプロンプトと、聞いた後のつなぎ方
ヒアリングシートは「質問項目を埋めるための表」だと思われがちです。けれど本当に差がつくのは、項目の数ではなく、クライアント自身が言葉にできていない強みまで引き出せるかどうか。私自身、AI戦略立案ツールの開発と日々のマーケティング支援の現場で、数多くのヒアリングに立ち会ってきました。その経験から、まず必須項目の型を押さえ、その上で「隠れた強み」を掘り起こす質問の設計まで、戦略を提案する側のプロ向けにまとめます。
ヒアリングシートとは?なぜ「聞いたのに使えない」が起きるのか
ヒアリングシートとは、クライアントの目的・現状・課題・背景を、抜け漏れなく聞き出すための質問項目リストです。役割は「情報の記録」ではなく「戦略の素材集め」にあります。事実だけが並んで、そこから戦略を組み立てられないなら、そのヒアリングシートは機能していません。
「聞いたのに使えない」が起きる原因ははっきりしています。多くのヒアリングが「自社紹介の聞き取り」で終わっているからです。事業内容や沿革は埋まるのに、肝心の「この会社ならではの強み」が出てこない。理由はシンプルで、強みは本人にとって当たり前すぎて、わざわざ言葉にされないからです。
「うちには特に強みなんてないんですよ」と言う社長ほど、話を掘っていくと独自の強みが眠っている、というのは実務でよく出会う場面です。本人が無意識にやっていることこそ、競合が真似できない強みだったりします。だからヒアリングは、相手が言語化できていないものを、こちらから引き出す設計にしておく必要があります。
| 使えるヒアリング | 使えないヒアリング | |
|---|---|---|
| ゴール | 戦略の素材を集める | 事実を記録する |
| 聞く範囲 | 顧客・競合・自社の3方向 | 自社のことだけ |
| 強みの扱い | 本人が気づいていない強みを掘る | 「強みは?」と聞いて終わり |
| 聞き方 | 仮説をぶつけて確認する | 白紙で質問を投げる |
ヒアリングシートの価値は「項目の網羅性」ではなく「戦略の素材として使えるか」で決まります。事実の記録で終わらせないことが出発点です。
マーケティングのヒアリングシートに必要な必須項目(テンプレート)
マーケティングのヒアリングシートに必要な必須項目は、「目的・現状・課題・ターゲット・競合・予算と体制・意思決定プロセス」の7つです。この7項目は、マーケティング戦略の土台である3C(顧客・競合・自社)に対応しています。自社のことだけでなく顧客と競合まで聞くのは、後で説明するとおり、強みが「3つの交点」にしか存在しないからです。
そのまま使えるテンプレートとして、各項目の内容と狙いを表にまとめます。
| # | 必須項目 | 聞く内容 | 3C対応 |
|---|---|---|---|
| 1 | 目的・ゴール | 達成したい状態とKGI/KPI、納期 | 自社 |
| 2 | 現状 | 売上・流入・既存施策とその結果 | 自社 |
| 3 | 課題 | 現状とゴールのギャップ、困りごと | 自社 |
| 4 | ターゲット | 既存顧客像、買ってくれる人の特徴 | 顧客 |
| 5 | 競合・代替 | 比較される相手、失注先 | 競合 |
| 6 | 予算と体制 | 使える予算・人・リソース | 自社 |
| 7 | 意思決定プロセス | 決裁者、検討の流れ、判断基準 | 自社 |
このテンプレートで重要なのは、4番(顧客)と5番(競合)を省略しないことです。時間がないと、つい自社の話だけで終わらせがちですが、それでは強みが見えません。
💡 Tip: 本当の強みは「顧客が求めていること × 競合が提供できていないこと × 自社が得意なこと」が重なった一点にしかありません。だから顧客・競合・自社を別々に聞いてから、後で重ね合わせます。自社単体で「強みは?」と聞いても出てこないのは、このためです。


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クライアントも気づいていない「隠れた強み」を引き出す6つの問い
クライアントが気づいていない隠れた強みは、「御社の強みは何ですか?」と直接聞いても出てきません。本人にとって当たり前だからです。角度を変えた6つの問いで、外側から掘り起こします。
聞くときのコツは、白紙で質問を投げないこと。人は「強みは?」と空欄で聞かれると固まりますが、「こういう強みがあると見ましたが、合っていますか?」と叩き台をぶつけられると、急に答えやすくなります。事前に公開情報から強みの仮説を立てておき、確認・修正してもらう形にすると、ヒアリングの密度が変わります。
引き出すための6つの問いは次のとおりです。
- 顧客の評価で聞く — 「お客様から『ここが良い』と言われるのはどこですか?」。自己評価ではなく他者評価から入ると、本人が見落としている強みが出ます
- 競合と比べて聞く — 「競合と比べて、ここは負けないと思う点は?」。絶対評価だと「特にない」になりますが、相手を置くと差が見えます
- 3カテゴリで棚卸しする — 強みを「能力(技術・ノウハウ)」「関係資産(既存顧客・提携先・紹介)」「実績」の3つに分けて聞きます。とくに関係資産は、漠然と聞くと絶対に出てきません
- 捨てているものを聞く — 「それを守るために、あえてやっていないことは?」。あえて捨てる選択をしているからこそ、競合は簡単に真似できません。このトレードオフこそ、模倣されにくい独自性の正体です
- 想起の場面を聞く — 「お客様はどんな場面でこのサービスを思い出しますか?」。競合が押さえていない"思い出されるきっかけ"は、空白のチャンスになります
- 言っていることと行動のズレを探す — 顧客が「品質重視」と言うのに値引きで決める、といった矛盾の裏に本音があります。建前ではなく本当の動機に強みを当てに行きます
3番の関係資産は、見落とされがちですが効きます。「これまで付き合いのある取引先、繰り返し買ってくれる顧客、紹介してくれる人は誰ですか?」と具体的に聞くと、本人が強みと認識していなかった資産が出てきます。以前、ある制作会社へのヒアリングで関係資産を掘ったところ、「特定業界の同業からの紹介で仕事が回っている」という事実が出てきて、それがそのまま提案の軸になったことがあります。
⚠ 注意: 「関係資産」と「捨てているもの(トレードオフ)」は、ヒアリングシートに独立した項目として入れておかないと、必ず聞き忘れます。この2つは本人が無意識にやっているため、こちらから意図的に聞かないと表に出てきません。
一人で聞くと、強みは深掘りしきれない
正直に言うと、私も一人でヒアリングしていた頃は、相手の話につい同調して「いいですね」で流してしまい、強みを掘りきれないことがよくありました。一対一だと、どうしても相手のペースに合わせてしまうのです。
ここで効くのが、視点の違う複数人で問い直すことです。全体を俯瞰する人、顧客の本音を代弁する人、そして「その強み、本当に真似されないですか?」とあえて反論する批判役。同じ事実でも見る角度が変わると、一人では拾えない強みや盲点が浮かびます。批判役がいると、「思い込みの強み」が削られて「本物の強み」だけが残ります。
私たちが開発しているMyMarketerのディスカッションモードは、この複数視点での問い直しを、役割の違う複数のAIで行う仕組みです。クライアント本人が当たり前と思って言葉にしない強みを、別々の角度から問いを投げて引き出し、戦略の素材として整理します。一人のヒアリングで起きがちな「同調して深掘りできない」を、構造で防ぐ発想です。
集めた声を「戦略の素材」に変える整理法
ヒアリングで集めた声は、3Cの交点を取り、WHO-WHAT-HOWに落とすことで戦略の素材になります。聞きっぱなしにせず、必ず一段深い構造へ翻訳するのがコツです。集めた断片をそのまま提案書に貼っても、戦略にはなりません。
整理の流れはシンプルです。まず顧客・競合・自社の3方向で受け止め、3つが重なる「勝てる戦場」を探します。次に、誰に届けるか(WHO)、何を価値として届けるか(WHAT)、どう届けるか(HOW)の順で組み立てます。この型の詳しい使い方はWHO-WHAT-HOWフレームワークの実践ガイドを、競合の整理は競合分析のやり方を、ターゲットの深掘りはペルソナ設定のテンプレートを参照してください。
整理のときに大事なのが、事実と仮説を分けることです。ヒアリングで「確認できた事実」と「こちらが立てた仮説(要検証)」を区別してラベルを付けておく。強い言い切りには強い根拠を、根拠が弱いものは「仮説」として扱う。こうしておくと、提案書で数字や強みを断定しすぎる事故を防げます。
ここまで整理できれば、あとは提案書に落とすだけです。集めた強みは、提案書のなかで「なぜこの施策なのか」を支える根拠として効いてきます。提案書への具体的な落とし込みはマーケティング提案書の作り方でまとめています。
AIをヒアリングに活かす(プロンプト集)
AIはヒアリングの「項目のたたき台づくり」「議事録からの要点抽出」「強みの仮説出し」に活かせます。ヒアリングそのものを置き換えるのではなく、準備と整理を速くする使い方が現実的です。コピーして案件情報を差し込んで使ってください。
① 業種別にヒアリング項目のたたき台を作る
あなたはマーケティング戦略の提案者です。
以下のクライアントに初回ヒアリングをします。目的・現状・課題・ターゲット・競合・予算/体制・意思決定の7項目について、
業種特性をふまえた具体的な質問を、各項目3つずつ作ってください。
- 業種:( )
- 規模:( )
- 想定する依頼内容:( )
② 議事録から戦略の素材を抜き出す
以下のヒアリング議事録から、「顧客・競合・自社」の3つに分類して要点を抽出してください。
さらに、クライアント本人が強みと認識していなさそうだが強みになり得る点を、仮説として3つ挙げてください。
議事録:(貼り付け)
③ 隠れた強みの仮説を出す
以下の公開情報をもとに、この会社の「本人が当たり前と思って言語化していなさそうな強み」を、
顧客評価・競合比較・関係資産・トレードオフの観点から仮説出ししてください。
ヒアリングで確認すべき質問もセットで作ってください。
情報:(会社概要・実績などを貼り付け)
私が普段よく使うのは②です。長いヒアリング議事録を貼るだけで、顧客・競合・自社の3つに仕分けてくれるので、整理の出発点が一瞬で作れます。手で分類すると30分かかる作業が、数分で下書きになります。
ただし、AIが出した強みの仮説は、あくまで仮説です。必ずヒアリングの場でクライアント本人に確認し、事実かどうかを検証してください。裏取りのないまま提案書に載せると、根拠を突かれて信頼を失います。

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記事を読むよくある質問(FAQ)
Q. ヒアリングシートの項目は多いほうがいいですか?
多ければ良いわけではありません。必須は7項目(目的・現状・課題・ターゲット・競合・予算と体制・意思決定)です。項目を増やすより、各項目で「強みを引き出す問い」を仕込むほうが、戦略の素材として使えるヒアリングになります。
Q. 「強みは特にない」と言われたらどうすればいいですか?
直接「強みは?」と聞かず、角度を変えます。「お客様から褒められる点は?」「競合と比べて負けない点は?」「繰り返し買う顧客は誰か?」と具体的に聞くと、本人が当たり前と思っていた強みが出てきます。
Q. ヒアリングシートとオリエンシートは違いますか?
クライアント側が依頼内容をまとめるのがオリエンシート、提案側が聞き出すのがヒアリングシートと呼び分けることが多いですが、必要な項目は共通します。この記事の7項目はどちらにも使えます。
Q. AIにヒアリングを任せてもいいですか?
ヒアリング本番は人が行うのが基本です。AIは項目の準備、議事録の要約、強みの仮説出しといった準備と整理に使い、確認と判断は人が担います。

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記事を読むまとめ:ヒアリングは「聞く」より「引き出す」
ヒアリングシートの質を決めるのは、項目の数ではなく、クライアント本人も気づいていない強みまで引き出せるかどうかです。必須7項目で土台を作り、6つの問いで隠れた強みを掘り、集めた声は3CとWHO-WHAT-HOWで戦略の素材に変える。そして強みの深掘りは、一人で抱えず複数の視点で問い直す。これが「聞いて終わり」にしないヒアリングの形です。
良いヒアリングは、その後の戦略と提案書の質をまるごと引き上げます。逆に、ここが薄いと、どれだけ提案書を磨いても土台が弱いままです。聞く工程こそ、いちばん手を抜けないところだと考えています。
戦略の素材を一人で引き出しきるのは、思っているより難しいものです。クライアントの隠れた強みを複数の視点で掘りたい方は、MyMarketerのディスカッションモードを無料体験で試してみてください。
著者について

山本至人
200社以上の中小企業マーケティングを支援。WHO-WHAT-HOWフレームワークをAIに組み込んだMyMarketerの開発者。株式会社WHAT代表取締役。東京大学松尾研AI経営修了。法政大学法学部卒業。映像制作事業やDtoCアパレルブランドなど複数の新規事業立ち上げにCMOとして携わる。2023年株式会社WHAT設立。外部CMOサービスにて多くの企業のマーケティング支援を実施。東京大学松尾研AI経営修了。
- 株式会社WHAT 代表取締役
- 東京大学松尾研 AI経営寄付講座 修了
- 複数企業の外部CMOとしてマーケティング支援を実施







