
ハイグラウンドとは?顧客×強み×競合の隙に立つマーケティング戦略の作り方
ハイグラウンドは、顧客が求める価値と自社の強みが合い、競合が容易には同じ価値を提供しにくい立ち位置を考える比喩です。本記事では、その候補を顧客・競合・自社の3つから探し、実際に選ばれるかを確かめる手順として使います。
「他社と違う」というだけでは、選ばれる理由になるとは限りません。一方で、差別化が必ず一時的で、ハイグラウンドなら永続するという区別でもありません。顧客への価値を、どう提供し続けるかまで確認することが要点です。
ハイグラウンドと差別化の違いは?選ばれ続ける条件を考える
例えば「丁寧な対応」を掲げるだけでは、競合との違いを判断しにくくなります。何をどう確認し、顧客のどの困りごとを解決しているのかを具体化します。対応記録を蓄積して次の説明や商品改善に使っているなら、その仕組みも調べる対象です。ただし蓄積があるだけで、他社より優れているとはいえません。
ハーバード・ビジネス・スクールの戦略の解説も、価値提案に加え、活動の選択、やらないこと、活動同士が補い合う関係を挙げています。独自の言葉を付けるだけでなく、その価値を提供する仕事の組み合わせを見ます。
ハイグラウンドの見つけ方:顧客・競合・自社を照合する
- 顧客:何を達成したくて、何に困っているか
- 競合・代替手段:今はどう解決し、どこに不満が残るか
- 自社:その不満を解決できる能力・資料・体制があるか
重なる候補を作る → 根拠の不足を確かめる → 小さく提案して反応を記録する
顧客の選定理由を集める
商談・問い合わせ・失注・解約の記録を読み、「なぜ検討を始めたか」「他に何を比べたか」「決め手と不安は何か」を整理します。既存顧客だけを見ると、自社を選ばなかった理由を見落とします。発言、行動、担当者の推測を分けて残します。
競合は直接競合だけでなく代替手段も見る
| 比較相手 | マーケティング支援での例 | 確認すること |
|---|---|---|
| 同じ種類のサービス | 他の支援会社やツール | 担当範囲、条件、実行の負担 |
| 違う種類のサービス | 広告代理店、業務代行 | 同じ課題をどこまで解決するか |
| サービス以外 | 内製、学習、現状維持 | 切り替えない理由や追加負担 |
公開ページに記載がないことを「提供できない」と扱わず、不明として残します。競合が手薄でも、需要がない、採算が合わない、提供が難しいためかもしれません。空白があること自体を参入理由にしないようにします。
自社の能力を、実際の仕事で確かめる
データ、専門知識、取引関係、業務の組み合わせを棚卸しします。「長年やってきた」だけでなく、誰がどの資料を使い、何を再現できるかを記録します。競合が再現するのに必要な費用や時間が分からなければ、模倣困難性は仮説のままにします。
見つけた候補を選ぶ前に確かめる4つのこと
固定の点数や重みで自動的に決めず、根拠と不足を横に置いて比べます。情報が足りない項目を0点や低評価で埋めると、未調査と弱点を混同します。
| 問い | 判断に使う材料 | 保留する場合 |
|---|---|---|
| 顧客に価値があるか | 選定理由、困りごと、利用・支払いの反応 | 自社の推測だけ |
| 他の手段でも同じように解決できるか | 顧客が比較した条件と競合の提供範囲 | 競合情報が未掲載・未調査 |
| 自社が提供し続けられるか | 担当、工程、品質、費用、再現記録 | 特定担当の無理に依存 |
| 事業として成り立つか | 対象需要、単価、粗利、獲得・維持の費用 | 売上だけで費用を未確認 |
小さな市場でも利益が残ることはありますが、狭いほど有利とは限りません。選ばれやすさと十分な需要・採算を一緒に確認します。すべてを高く自己評価しても、将来の競争優位が保証されるわけではありません。
強みを見つけたら、届ける相手を絞る
ハイグラウンド戦略を自社で検討する5ステップ
- 顧客記録を選ぶ。購入・失注など比較できる記録を集め、足りなければ利用範囲を確認したうえで質問する。
- 選定理由と代替手段を並べる。根拠のあることと不明を分ける。
- 自社が提供できることを照合する。実績資料、担当、費用、品質の確認方法をそろえる。
- 候補を比較する。需要・提供能力・採算と、その判断を変えうる不足情報を記す。
- 一つの提案として試す。誰の何をどう解決するかを説明し、反応と採算を記録する。
顧客の人数や文章の字数を達成条件にしません。候補の理由を担当者が説明でき、未確認の前提と検証方法が分かることを確認します。
ハイグラウンドの具体例:設備保守会社の2案を比べる
以下は設備保守会社を想定した架空例です。実際の顧客発言や受注実績ではありません。
| 項目 | 候補A:夜間の初動対応 | 候補B:予防保全の記録整理 |
|---|---|---|
| 想定する課題 | 停止時に誰へ連絡すればよいか分からない | 履歴が散らばり交換時期を判断しにくい |
| 先に確かめる顧客資料 | 時間帯別の問い合わせと対応記録 | 点検票と故障・交換の履歴 |
| 自社の確認 | 夜間の当番、移動範囲、追加費用 | 資料の統合方法、確認担当、更新負担 |
| 競合の確認 | 受付と現地対応の違い、対応地域 | 点検報告と計画提案の担当範囲 |
| まだ決められないこと | 需要と運営費が未確認なので採用保留 | 既存資料で試行できるか確認して判断 |
この架空例では、夜間の当番や対応費用が決まっていないAを先に売り出すと、約束を守れないおそれがあります。Bは既存の点検票を使えるなら、一社分を整理する小さな試行から始められます。だからといって、Bが競合に勝てると決まったわけではありません。
試した後は、担当者が「どの設備を、なぜ先に交換するか」を説明できるようになったか、記録を更新する人と負担が決まったかを確認します。判断に使われず、整理作業だけ増えたなら、提供内容を直すか見送ります。役に立ち、続けられる負担なら、有料で頼みたいかと必要な提供条件を確認して次の提案へ進みます。
一度決めても、見直す条件を残す
顧客の選定理由、競合の提供範囲、自社の費用が変われば、優先する候補も変わります。担当者と次回確認日を決め、失注理由や採算の変化があれば予定を待たず見直します。半年という固定周期だけに頼らない運用にします。
よくある質問
中小企業でも使える考え方ですか?
使えます。ただし規模が小さいほど有利とは限りません。自社が継続して提供でき、顧客が価値を感じ、採算の合う範囲を確かめます。
競合にないものが見つからない場合は?
機能の違いだけでなく、提供範囲や導入・運用負担など、顧客が比較する条件を見直します。独自性が見つからないことを無理な主張で埋めないようにします。
最初に何をすればよいですか?
直近の購入・失注の記録から選定理由を整理します。不足する問いを決め、利用可能な資料と担当者をそろえて確認します。
顧客の範囲を整理するには、戦略ターゲットとコアターゲットの決め方へ。外部支援の必要性は、マーケティングコンサルの代わりを選ぶ判断基準で確認できます。
著者について

山本至人
200社以上の中小企業マーケティングを支援。WHO-WHAT-HOWフレームワークをAIに組み込んだMyMarketerの開発者。株式会社WHAT代表取締役。東京大学松尾研AI経営修了。法政大学法学部卒業。映像制作事業やDtoCアパレルブランドなど複数の新規事業立ち上げにCMOとして携わる。2023年株式会社WHAT設立。外部CMOサービスにて多くの企業のマーケティング支援を実施。東京大学松尾研AI経営修了。
- 株式会社WHAT 代表取締役
- 東京大学松尾研 AI経営寄付講座 修了
- 複数企業の外部CMOとしてマーケティング支援を実施




