
マーケティングの内製化は「人を雇う」だけじゃない|AIで進める内製化の手順と失敗しないコツ
「代理店に毎月数十万円を払い続けているけれど、何にいくらかかっているのか正直わからない」「自社のことなのに、施策の決定をいつも外の人に委ねている」。こうした違和感から、マーケティングの内製化を考え始める会社は増えています。
ただ、いざ調べてみると出てくるのは「マーケ人材を採用しましょう」「チームを育てましょう」という話ばかり。人を雇う予算も、育てる時間もない――そこで手が止まってしまう方がほとんどです。
この記事でわかること
- マーケティングの内製化とは何か、そして「人を雇う」以外の選択肢があること
- 内製化のメリットとデメリットを正直に整理した全体像
- 内製化に向く業務と、外注に残したほうがいい業務の切り分け方
- 「人を雇う内製化」と「AIで内製化」を費用・スピード・属人化の観点で比較した結果
- AIに任せる仕事と人が判断する仕事の分け方、そして失敗しない進め方
先に立場を明かしておきます。私はマーケティング戦略を立てるAIサービスを開発・運営していて、本文の後半では自社のツールにも触れます。ただ、この記事の目的は宣伝ではなく、「人を増やさずにマーケティングを社内へ取り戻す」という、あまり語られてこなかった選択肢を整理することです。まずは内製化そのものの全体像から見ていきます。
マーケティングの内製化とは?
マーケティングの内製化(インハウスマーケティング)とは、これまで広告代理店や制作会社などの外部に委託していたマーケティング業務を、自社の中で行えるようにすることです。具体的には、戦略の立案、広告の運用、SNSやコンテンツの制作、効果測定といった業務を、外注先に丸ごと任せるのではなく、自社の判断と手で動かせる状態にしていきます。
ここで多くの解説記事が前提にしているのは「内製化するなら、マーケティングができる人を採用するか、社内の誰かを育てる」という考え方です。たしかにそれは正攻法のひとつです。けれど、人を雇う内製化には採用コストも育成期間もかかり、中小企業ほどそこで止まってしまいます。
実は内製化の本質は「人を増やすこと」ではなく、「自社のマーケティングの判断を、自社に取り戻すこと」にあります。誰に・何を・どう届けるかという意思決定を外部任せにせず、自分たちで握る。その判断を支える手段は、人の採用だけとは限りません。後半で詳しく触れますが、AIを「もう一人のマーケター」として体制に組み込む道もあります。
内製化のゴールは「自社でマーケティングの判断を回せる状態」を作ること。そのための手段は ①人を雇う ②社内で育てる ③AIマーケターを使う の3つがあり、予算や立ち上がりの速さに応じて組み合わせるのが現実的です。「人がいないから内製化できない」は、もう前提が変わりつつあります。
なぜ今、マーケティングの内製化が注目されるのか
内製化への関心が高まっている背景には、外注に依存し続けることへの3つの不満があります。
ひとつめはコストの不透明さです。代理店に支払う費用には、媒体費に加えて運用手数料(広告費の15〜20%程度が一般的)が乗ります。月日が経つほど「この金額に見合う成果が出ているのか」が見えにくくなり、契約を続ける理由を説明できなくなっていきます。
ふたつめはスピードの遅さです。施策をひとつ変えるだけでも、外注先とのやり取りに数日かかる。市場やお客さまの反応が速く動く今、この時間差が機会損失になります。自社で判断できれば、思いついたその日に試せます。
みっつめはノウハウが社内に残らないことです。外注に任せきると、うまくいった理由もいかなかった理由も外部にたまり、自社には「請求書」しか残りません。お客さまのことを一番知っているのは自社のはずなのに、その理解がマーケティングの改善に活きていかないのです。
私自身、現役のマーケティング責任者として数十社の外注見直しに立ち会ってきましたが、外注をやめたい理由を突き詰めると、地方の士業からWeb制作会社まで業種を問わず、ほとんどがこの「お金・速さ・学びが残らない」の3つに行き着きます。外注そのものが悪いわけではありません。何を外に出し、何を自社に残すかを決めていないことが、もやもやの正体です。この線引きについては、外注の側から整理した記事もあわせて読むと判断しやすくなります。

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記事を読むマーケティング内製化のメリットとデメリット
内製化は「いいことだらけ」ではありません。判断を誤らないために、メリットとデメリットを正直に並べておきます。
| 内製化のメリット | 内製化のデメリット | |
|---|---|---|
| コスト | 外注手数料が不要になり、長期的には費用を抑えやすい | 採用・育成・ツール導入の初期投資がかかる |
| スピード | 施策の意思決定と修正が速い | 立ち上がりまでに時間がかかる |
| ノウハウ | 成功も失敗も社内に蓄積される | 人材確保が難しく、見つからないと進まない |
| 品質・継続 | 自社の文脈を踏まえた施策が打てる | 担当者に依存し、退職で止まる(属人化) |
| 情報 | お客さまの一次情報を直接活かせる | 最新の手法やルール変更を追い続ける負担が大きい |
メリットは明快です。コストが下がり、スピードが上がり、ノウハウが残る。これは前の章で見た「外注の不満」の裏返しそのものです。
問題はデメリットのほうです。内製化を語る記事の多くは、デメリットとして「人材確保の難しさ」「属人化」「最新情報への追従負担」の3つを挙げ、そこで話を終えてしまいます。「だから外部の支援も使いましょう」と、結局もとの外注へ戻す結論に着地しがちです。
けれど、この3つのデメリットこそ、後半で説明する「AIで内製化する」という選び方が構造的に解いていく部分です。いったんこの3つを覚えておいてください。
💡 メリットとデメリットを天秤にかけるとき、「今すぐ全部を内製化する/しない」の二択で考えないことが大事です。一部だけ内製化し、残りは外注やAIに任せるハイブリッドが、ほとんどの会社にとっての現実解になります。
内製化に向く業務・外注に残したほうがいい業務
すべてを一度に内製化しようとすると、たいてい失敗します。まずは「何を社内に取り戻し、何は外に残すか」を切り分けましょう。判断の基準はシンプルで、自社の文脈やお客さま理解が成果を左右する業務ほど内製化の優先度が高く、専門技術や設備が必要な業務ほど外注に残すのが基本です。
内製化を優先したい業務
- マーケティング戦略の立案(誰に・何を・どう届けるか)
- お客さまの分析、ターゲットの設定
- SNSやメール、ブログなど日々の発信の判断
- 施策の効果測定と、次の打ち手の決定
これらは「自社のことを一番知っている人」が握るほど質が上がる領域です。外に出すほど、判断が一般論になっていきます。
外注に残してよい業務
- 高度な動画制作やデザインなど、専門設備・技術が要る制作
- 大規模な広告運用の細かなチューニング
- 一時的にしか発生しない単発のキャンペーン
この切り分けで軸になるのが、戦略の根っこにある「誰に・何を・どう届けるか」という考え方です。ここが定まっていないと、内製化しても施策がバラバラになります。戦略設計の型については次の記事で詳しく解説しています。

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記事を読む「人を雇う内製化」と「AIで内製化」を比べてみる
ここからがこの記事の本題です。内製化の手段は「人を雇う・育てる」だけではありません。AIマーケター、つまりマーケティングの戦略立案から実行・改善までを担うAIを「もう一人の担当者」として体制に組み込む選び方が出てきています。
先ほど覚えておいてほしいと言った、内製化の3大デメリット――「人材確保の難しさ」「属人化」「最新情報への追従」。この3つを、人を雇う場合とAIで内製化する場合で並べて比べてみます。
| 観点 | 人を雇う内製化 | AIで内製化 |
|---|---|---|
| 立ち上がりの速さ | 採用に数ヶ月、育成にさらに数ヶ月 | 導入したその日から動かせる |
| コスト | 担当者1人で年間数百万円規模 | 月額数千円〜数万円規模から始められる |
| 人材確保 | 採用市場で奪い合い、見つからないと進まない | 採用が不要。人がいなくても始められる |
| 属人化 | 担当者の退職でノウハウが消える | 判断の履歴がデータとして残り、消えない |
| 最新情報 | 個人が手法やルール変更を追い続ける | モデルの更新で新しい知見に追従しやすい |
注目してほしいのは、人を雇う内製化の「弱点」が、そのままAIで内製化する「強み」になっている点です。採用できないなら採用がいらない手段を、属人化が怖いなら知見が消えない手段を選ぶ。内製化が進まない理由の多くは「人」に紐づいているので、そこをAIで埋めると、止まっていた内製化が動き出します。
もちろんAIが万能なわけではありません。最終的に「この方向で行く」と腹を決めるのは人の仕事ですし、自社にしかない事情を伝えるのも人です。だからこそ次の章で、AIに任せる部分と人が握る部分を分けて整理します。
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AIに任せる業務、人が判断する業務の分け方
AIで内製化すると言っても、すべてをAIに丸投げするわけではありません。うまくいく内製化は、「考える材料を集めて整理する仕事」をAIに、「最終的にどうするかを決める仕事」を人に分けています。
| 工程 | 主にAIが担う | 主に人が判断する |
|---|---|---|
| 戦略立案 | 市場・競合・顧客の情報整理、戦略案の複数提示 | どの案を自社の方針として採るか |
| 施策の実行 | 文章・構成案の作成、A/Bテスト案の用意 | ブランドとして出していい表現かの最終確認 |
| 効果測定 | 数字の集計、異常値の検出、次の打ち手の提案 | 提案を採用するか、現場の感触と照らす判断 |
| 改善 | 前回施策の結果をふまえた改善案の生成 | 続ける・やめる・変えるの意思決定 |
この分け方の良いところは、人がやるべき仕事が「判断」に集中することです。情報を集めて表にまとめる、文章のたたき台を作る、数字を拾うといった時間のかかる作業をAIに任せれば、担当者が兼任であっても、判断にだけ頭を使えばよくなります。
私たちのサービスを使っている中小のBtoB企業やWeb制作会社の方からも、「マーケティングが初めて体系的に理解できた」「一人では手が回らなかった効果測定まで回せるようになった」という声をいただきます。AIに置き換えるというより、判断する人の隣に、調べてまとめてくれる担当者がもう一人増えるイメージが近いです。
AIマーケターという考え方そのものをもう少し知りたい方は、こちらで詳しく解説しています。

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AIマーケターとは?できること・ChatGPTとの違い・費用を元CMOが解説
記事を読むAIで内製化を始める進め方|4つのステップ
人を雇わずにマーケティングを内製化する場合も、いきなり全部を切り替えるのは禁物です。次の4ステップで、小さく始めて広げていきます。
ステップ1:今のマーケ業務を棚卸しする
まず、現在どの業務を誰が(どの外注先が)担っているかを書き出します。費用と、それぞれの成果が見えているかどうかも添えます。ここで「何にいくら払って、何が見えていないか」が可視化され、内製化すべき優先順位が見えてきます。
ステップ2:戦略の判断を社内に取り戻す
最初に内製化すべきは、作業ではなく「誰に・何を・どう届けるか」という戦略の判断です。ここが外注任せのままだと、どんな施策も借り物になります。AIを使えば、自社の情報をもとに戦略のたたき台を短時間で作れるので、ゼロから考える負担なく判断を社内に戻せます。
ステップ3:ひとつの施策で小さく回す
戦略が定まったら、いきなり全施策を内製化せず、まずひとつ(たとえばブログかメール)をAIと一緒に回してみます。実行・効果測定・改善の1サイクルを社内で完結させ、「自分たちでも回せる」という手応えを作ることが目的です。
ステップ4:改善サイクルを習慣にする
ひとつの施策で回せたら、週1回のペースで「数字を見る→次の打ち手を決める」サイクルを習慣にします。この改善の積み重ねが、外注では社内に残らなかった「学び」をためていきます。PDCAを自動で回す仕組みを使えば、兼任でも継続できます。
💡 中小企業がどこから手をつけるべきかをもっと具体的に知りたい場合は、中小企業のマーケティング戦略の作り方|何から始める?売れる仕組みを作る5ステップもあわせて読むと、内製化の最初の一歩が描きやすくなります。
よくある内製化の失敗と、その回避策
内製化でつまずくパターンには、共通点があります。代表的な3つと、その避け方を挙げておきます。
失敗1:戦略を決めずに作業から内製化する SNS運用や広告の出稿といった「作業」から内製化を始めると、軸がないまま手だけが動き、外注時代より成果が落ちることがあります。回避策は、ステップ2のとおり戦略の判断を先に社内へ戻すこと。何を基準に施策を選ぶかが決まっていれば、作業の内製化は後からでも回ります。
失敗2:一人に全部を背負わせて属人化する 「マーケ担当を一人立てて全部任せる」と、その人が辞めた瞬間にすべて止まります。回避策は、判断の根拠や施策の結果を記録に残し、人ではなく仕組みにノウハウをためること。AIで内製化する場合、判断の履歴がデータとして残るので、属人化を構造的に防げます。
失敗3:ツールを入れただけで満足する ツールやAIを導入しても、「誰がどう使い、何を判断するか」を決めなければ、宝の持ち腐れになります。回避策は、前章の役割分担マトリクスのように、AIに任せる仕事と人が決める仕事をあらかじめ線引きしておくことです。
⚠️ 次のサインが出ていたら、内製化の進め方を見直すタイミングです。
・施策は増えたのに、戦略を説明できる人が社内にいない
・担当者が休むと、マーケティングが完全に止まる
・ツールは導入したが、出力を誰も判断に使っていない
ひとり体制でこれから内製化を担う方は、判断軸の作り方と改善サイクルの回し方を整理したこちらの記事も実務の助けになります。

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ひとりマーケターは何からやるべき?施策に追われる前に作る戦略・優先順位・改善サイクル
記事を読むよくある質問
マーケティングの内製化と外注は、どちらが安いですか?
短期的には、すでに体制がある外注のほうが安く見えることが多いです。ただし外注は手数料が継続的にかかり、ノウハウも社内に残りません。内製化は初期に投資が必要ですが、長期的にはコストを抑えやすく、学びが蓄積されます。人を雇う内製化は年間数百万円規模になりますが、AIで内製化する場合は月額数千円〜数万円規模から始められるため、コスト面のハードルは大きく下がります。
マーケティングの知識がない会社でも内製化できますか?
戦略の判断を支える仕組みがあれば、専門知識ゼロからでも始められます。重要なのは「全部を自力でやる」ことではなく、「自社の判断を自社で握る」ことです。AIに情報整理や戦略案の作成を任せ、人は「どれを選ぶか」だけを決める形にすれば、マーケティング専任がいなくても回せます。まずは戦略の内製化から小さく始めるのがおすすめです。
内製化と外注は、どう使い分ければいいですか?
自社の文脈やお客さま理解が成果を左右する業務(戦略立案・効果測定・日々の発信判断)は内製化し、専門設備や高度な技術が必要な業務(高品質な動画制作など)は外注に残すのが基本です。全部を内製化する必要はなく、内製・外注・AIを組み合わせるハイブリッドが現実的です。
AIで内製化すると、人はいらなくなりますか?
いいえ。AIは情報を集めて整理し、案を出すところまでを担いますが、「最終的にどうするか」を決めるのは人の仕事です。AIで内製化するとは、人を不要にすることではなく、判断する人が時間のかかる作業から解放され、判断に集中できる状態を作ることです。
まとめ:内製化は「人を増やす」より「判断を取り戻す」
マーケティングの内製化でつまずく会社の多くは、能力ではなく「人を雇わないと内製化できない」という思い込みでつまずいています。
内製化の本当のゴールは、人員を増やすことではなく、誰に・何を・どう届けるかという判断を、外注任せにせず自社で握ることです。その手段は「人を雇う・育てる・AIを使う」の3つがあり、予算と立ち上がりの速さに応じて組み合わせれば、人がいなくても内製化は始められます。
内製化が進まない理由とされてきた「人材確保の難しさ・属人化・最新情報への追従」は、AIで内製化する選び方が構造的に解いていく部分です。まずは戦略の判断を社内に取り戻し、ひとつの施策で小さく回し、改善を習慣にする。外注をやめることがゴールではなく、自社のマーケティングを自分たちの手に取り戻すことがゴールです。
私自身、マーケティングの判断をAIで支えるサービスを開発する中で、「人がいないから何もできない」と止まっていた会社が、判断を取り戻して動き出す場面を何度も見てきました。内製化の第一歩は、立派なチームを作ることではなく、自社の戦略を一度、自分たちの言葉にしてみることです。
著者について

山本至人
200社以上の中小企業マーケティングを支援。WHO-WHAT-HOWフレームワークをAIに組み込んだMyMarketerの開発者。株式会社WHAT代表取締役。東京大学松尾研AI経営修了。法政大学法学部卒業。映像制作事業やDtoCアパレルブランドなど複数の新規事業立ち上げにCMOとして携わる。2023年株式会社WHAT設立。外部CMOサービスにて多くの企業のマーケティング支援を実施。東京大学松尾研AI経営修了。
- 株式会社WHAT 代表取締役
- 東京大学松尾研 AI経営寄付講座 修了
- 複数企業の外部CMOとしてマーケティング支援を実施







