ひとりマーケターは何からやるべき?仕事の優先順位とAI・外注への任せ方
記事も書く。広告も見る。営業資料も頼まれる。社内でマーケティングを一人で担当していると、目の前の依頼を終えるだけで一週間が過ぎてしまいます。
最初に整理したいのは、今の売上目標に対して「どこが詰まっているか」と「誰がどこまで担当するか」です。同じひとりマーケターでも、問い合わせが足りない会社と、問い合わせ後に商談へ進まない会社では、先にやる仕事が変わります。
この記事では、社内のマーケティング担当者が、今週取り組む仕事と任せる仕事を決められるよう、記入例を交えて整理します。
最初に、上司・営業と成果の定義をそろえる
「集客を増やしてほしい」だけでは、広告、記事、SNSのどれを進めるか決められません。売りたい商品、増やしたい顧客、その人に起こしてほしい行動まで確認します。
一人で戦略を完成させてから相談する必要はありません。分かっていることと未確認のことを分けた一枚を持って、上司や営業とすり合わせます。
| 確認すること | 記入例:法人向けの業務支援サービスの場合 |
|---|---|
| 今期増やしたい成果 | 新規顧客との商談。問い合わせ件数だけでは評価しない |
| どんな顧客か | 業務が属人化し、引き継ぎに困っている会社の責任者 |
| 顧客が相談するきっかけ | 担当者の異動、業務量の増加、既存の仕組みの見直し |
| 今ある材料 | サービスページ、過去の提案書、商談記録、公開できる事例 |
| まだ分からないこと | 問い合わせが商談にならない理由。営業に確認する |
| 決める人 | 担当者が案を作り、目標と予算は上司、商談条件は営業と合意 |
これは架空の記入例です。自社の資料で埋まらない欄は、AIに推測で埋めさせず、確認先を書きます。
「誰に・何を・どう届けるか」を整理する方法は、WHO・WHAT・HOWの解説も参考になります。
優先順位は、受注までのどこが詰まっているかで決める
新しい施策の名前から選ぶと、できることが際限なく増えます。まずは現在の接点から受注までを並べ、どの段階に改善余地があるかを見ます。
| 今の状態 | 先に確かめること | 最初の仕事の候補 |
|---|---|---|
| 対象顧客との接点が少ない | その人が情報を探す場所と、今ある接点 | 検索需要に合う記事、紹介先、広告などを比較する |
| ページは見られるが相談が少ない | 読者の課題と説明が合うか、相談先が分かるか | 内容・事例・導線・フォームを見直す |
| 問い合わせは来るが商談にならない | 対象外の問い合わせか、対応が遅いか、期待が違うか | 営業と記録を確認し、訴求や対応を直す |
| 仕事は進むが結果が分からない | 計測できているか、営業結果とつながるか | 指標の定義と記録方法を整える |
たとえば、対象顧客からの問い合わせはあるのに商談にならないなら、記事を増やす前に営業との確認が候補になります。ただし、数件の結果だけで流入施策を止めるのも早計です。件数と期間を添えて、どこまで分かるかを共有します。
複数の仕事を並行すること自体が悪いわけではありません。実行する人と確認する人が足りるか、何を変えたかが残るかで判断します。施策の結果を待つ間に、次の候補を調べたり、原稿を準備したりして構いません。
今週の仕事を「自分・社内・AI・外注」に分ける
マーケティング担当が一人でも、すべての判断と作業を一人で引き受ける必要はありません。AIには案の作成や分析を任せられますが、会社としての約束や予算を決める責任者は別に定めます。
| 仕事 | AIに渡せる部分 | 人や外部の担当者が持つ部分 |
|---|---|---|
| 施策の優先順位 | 資料と実績を整理し、候補と採否の理由を作る | 事業目標、予算、社内の優先事項との合意 |
| 記事・LP制作 | 調査、構成、原稿、画像案、修正案 | 事実・訴求の確認、公開する範囲の判断。専門的な制作は外注も候補 |
| 実績の振り返り | 取得できる数字の集計、変化と原因仮説の整理 | 計測条件の確認、営業事情の補足、次の投資判断 |
| 顧客理解 | 商談記録の分類、よく出る課題の整理 | 顧客との対話、記録の利用可否、推測と事実の確認 |
AIへの依頼は「記事を書いて」だけでなく、読者、売りたい商品、使ってよい資料、完成条件まで渡します。利用するツールや接続が対応していなければ、データ取得や公開までは実行できません。任せる範囲は実際の環境で確認します。
外注先にも同じように、作ってほしいものと判断の基準を渡します。マーケティングの外注範囲と費用の比較では、依頼前にそろえる項目を整理しています。
上司への相談に、そのまま使える業務整理表
仕事を断るか抱えるかの二択になる前に、既存業務と新しい依頼を同じ表に置きます。「何を先に進めるか」「追加すると何が遅れるか」を一緒に決めやすくなります。
相談時には、各仕事の概算時間と期限も添えます。時間がまだ読めなければ、見積もるための調査・試作を先に決めます。
| 仕事 | 目指す成果・根拠 | 担当・今週の扱い |
|---|---|---|
| サービスページ改善 | 対象顧客からの相談を増やす。営業から、支援内容が伝わっていないという指摘あり | AIが修正案を作り、営業責任者が内容を確認。指摘箇所を直す |
| 新規記事 | 未接点の顧客に情報を届ける。検索需要・競合・自社事例は調査中 | AIが調査と構成案を作成。マーケ担当が調査後に制作を判断 |
| 新しいSNSを開始 | 成果は未定。「競合が始めた」という情報のみ | 顧客がいるかを調べて上司に相談。運用開始は保留 |
この表も記入例であり、サービスページを必ず最優先にする意味ではありません。自社で確かめられた事実に置き換えて使ってください。
上司には、たとえば「この依頼を追加すると、今週予定していたページ改善が遅れます。どちらを先にしますか」と相談できます。作業時間が読めなければ、調査や試作まで進めて見積もりを直す方法もあります。
AIを入れるなら、繰り返す仕事を一つ動かしてみる
最初の候補は、資料がそろい、完成物を確認でき、繰り返し発生する仕事です。毎週の実績整理、記事の調査と構成、営業資料の更新などから選べます。
たとえば実績整理なら、「レポートを作る」だけで終わらせず、次のように依頼します。
今月の商談を増やすために、添付したページ別の実績と問い合わせ記録を整理してください。対象期間と指標の意味を確認し、分からない値をゼロにしないでください。数字から分かること、考えられる原因、次に確認することを分け、施策候補を理由付きで示してください。外部への公開や送信は行わないでください。
初回は、出力の量よりも、確認と修正にどれくらい手間がかかるかを見ます。毎回同じ説明を追加しているなら、必要な資料や基準を共通の置き場所へまとめます。毎回大きく直すなら、任せる範囲や手順を見直します。
AIをマーケティングの担当として動かす具体的な準備は、AIマーケターの導入と仕事の任せ方で説明しています。
最初の一週間でそろえるもの
一週間は着手の目安です。資料や社内合意がそろっていれば前倒しでき、足りなければ必要な確認から進めます。
- 目標と現在地の一枚:売りたい商品、対象顧客、今の接点、商談までの詰まりを整理する。
- 仕事の優先順位表:今週進める仕事、保留する仕事、担当と確認者を決める。
- AIまたは外注への最初の依頼:資料、成果物、完成条件、費用と権限の範囲を渡す。
- 次回確認する数字と日付:施策ごとの変更日を残し、同じ条件で比較する。
振り返りでは、記事本数などの作業量と、問い合わせ・商談・受注を別に見ます。LINEへの遷移も、友だち追加や相談の発生とは別の数字です。結果がまだ出ていない仕事を失敗と決めず、確認できたことから次を選びます。
一人で作業を抱え続けない体制へ
ひとりマーケターに必要なのは、今の人数でできる仕事を正確に見積もり、社内・AI・外部の力を組み合わせることです。目標と優先順位を共有できれば、新しい依頼が来ても、何を進めて何を後にするかを相談できます。
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著者について

山本至人
200社以上の中小企業マーケティングを支援。WHO-WHAT-HOWフレームワークをAIに組み込んだMyMarketerの開発者。株式会社WHAT代表取締役。東京大学松尾研AI経営修了。法政大学法学部卒業。映像制作事業やDtoCアパレルブランドなど複数の新規事業立ち上げにCMOとして携わる。2023年株式会社WHAT設立。外部CMOサービスにて多くの企業のマーケティング支援を実施。東京大学松尾研AI経営修了。
- 株式会社WHAT 代表取締役
- 東京大学松尾研 AI経営寄付講座 修了
- 複数企業の外部CMOとしてマーケティング支援を実施





