
WHY-WHAT-HOWとWHO-WHAT-HOWの違いとは?2つのフレームワークの使い分け
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フレームワーク比較の次は、実践に進みます
2つの違いを理解したら、ターゲット設定の実務と完全ガイドで深掘りできます。
「WHY-WHAT-HOWとWHO-WHAT-HOWは何が違うの?」「どちらを使えばいいの?」と迷っていませんか。似ているようで目的がまったく異なるこの2つ、使い分けを間違えると戦略が空回りしてしまいます。
この記事でわかること
- WHY-WHAT-HOWフレームワークの構造と得意領域(理念・ブランド設計)
- WHO-WHAT-HOWフレームワークの構造と得意領域(顧客起点の戦略設計)
- 2つのフレームワークの違いと場面別の使い分け基準
- 理念を売上につなげる「WHY→WHO変換」の実践チェックリスト
「WHY-WHAT-HOW」と「WHO-WHAT-HOW」——名前が似ているこの2つのフレームワークを混同していないだろうか。
山本至人(MyMarketer代表)がマーケティング支援をしている中で気づいたのは、「WHY-WHAT-HOW」で考えた理念がそのままマーケティング戦略になると思い込んでいる経営者が意外と多いことだ。あるIT企業の経営者が「WHY(ミッション)を明確にしたからマーケティング戦略はもう完成している」と言ったが、実際にはターゲット顧客が誰かも定まっていなかった。理念は素晴らしい。しかし、理念だけでは顧客に届かない。その後、この経営者と一緒にWHOの定義から戦略を再設計したところ、3ヶ月で広告CPAが30%改善し、問い合わせ数も倍増した。「理念を語る相手が明確になっただけで、こんなに変わるのか」——その言葉が印象に残っている。
理念は明確にした。ミッションも言語化した。それなのに、マーケティングが一向に前に進まない。広告を出してもSNSを始めても、手応えがない。もしそう感じているなら、それは理念の質の問題ではなく、理念と戦略を混同していた可能性がある。WHY(なぜやるのか)とWHO(誰に届けるか)は、似ているようでまったく別の問いだ。
この記事では、WHY-WHAT-HOWフレームワークとWHO-WHAT-HOWフレームワークの違いを整理し、それぞれをどの場面で使うべきかを解説する。2つのフレームワークを正しく使い分けることで、理念と戦略をつなぐ思考の道筋が見えてくるはずだ。
理念は素晴らしい。しかし、理念だけでは顧客に届かない。WHYで定めた想いを、WHO-WHAT-HOWで戦略に変換する——この橋渡しが、多くの中小企業に欠けているピースだ。
WHY-WHAT-HOWフレームワークとは?
WHY-WHAT-HOWフレームワークとは、Simon Sinekが提唱した「ゴールデンサークル」に基づく思考モデルで、「なぜやるのか(WHY)」を起点にビジネスの方向性を定める枠組みだ。
Sinekは著書『Start With Why: How Great Leaders Inspire Everyone to Take Action』(2009年、Portfolio/Penguin刊)の中で、人は「何をしているか(WHAT)」ではなく「なぜやっているか(WHY)」に共感して行動すると主張した。Apple、Southwest Airlines、Martin Luther King Jr.がなぜ影響力を持ったかをこのモデルで説明し、同年のTEDトーク「How great leaders inspire action」は累計6,500万回以上再生されている。
各要素の定義
| 要素 | 問い | 内容 |
|---|---|---|
| WHY | なぜやるのか? | 企業の存在意義・ミッション・信念 |
| WHAT | 何をやるのか? | 具体的な製品・サービス・事業内容 |
| HOW | どうやるのか? | 手法・プロセス・差別化の方法 |
思考の順番
重要なのはWHY → WHAT → HOWの順番で考えることだ。多くの企業は「何を売っているか(WHAT)」から説明を始めるが、優れたリーダーやブランドは「なぜそれをやっているか(WHY)」から語り始める。
活用シーン:
- 経営理念・ミッションの策定
- ブランドのストーリーテリング
- 社内向けのビジョン共有
- 採用活動での企業文化の発信
WHO-WHAT-HOWフレームワークとは?
WHO-WHAT-HOWフレームワークとは、マーケティング戦略の核となる3要素「誰に(WHO)」「何を(WHAT)」「どう届けるか(HOW)」を体系的に設計する実務型のフレームワークだ。詳細な実践手順はWHO-WHAT-HOWフレームワーク完全ガイドで解説している。
Peter Druckerは「マーケティングの目的は、顧客を十分に理解し、その人に合った製品やサービスが自然に売れるようにすることだ(The aim of marketing is to know and understand the customer so well the product or service fits him and sells itself)」と述べている(『Management: Tasks, Responsibilities, Practices』1973年、Harper & Row刊)。この考え方が示すように、マーケティングの出発点は顧客——つまりWHOだ。
WHO-WHAT-HOWは、「自社の商品・サービスを、誰にどんな価値として届けるか」を構造化する実践的な戦略設計の型だ。WHY-WHAT-HOWが「理念」の枠組みであるのに対し、WHO-WHAT-HOWは「戦略実行」の枠組みである。
各要素の定義
| 要素 | 問い | 内容 |
|---|---|---|
| WHO | 誰に届けるか? | ターゲット顧客・ペルソナの明確化 |
| WHAT | 何の価値を届けるか? | 顧客が得る便益(機能的・情緒的・自己表現的) |
| HOW | どう届けるか? | チャネル・メッセージ・施策の設計 |
思考の順番
WHO → WHAT → HOWの順番が鉄則だ。「誰に」が決まらなければ「何を」も「どう」も決められない。ターゲットが曖昧なまま広告やSNSを始めてしまうのは、地図なしでドライブに出発するようなものだ。
ある健康食品メーカーの支援で、まさにこの失敗を目の当たりにした。その会社は「世界をより健康に」という理念を掲げてFacebook広告を出稿したが、3ヶ月間で反応はほぼゼロ。理念は立派でも、広告を見た人は「自分のことだ」と感じなかった。WHOの定義を「40代・デスクワーク中心・健康診断でメタボ予備群と言われた男性」に絞り込み、メッセージも「健診結果が気になり始めたあなたへ」に変えたところ、CTRが4倍に跳ね上がった。理念は変えていない。届ける相手を定義しただけだ。
活用シーン:
- マーケティング戦略の立案
- 新商品・新サービスの企画
- 広告・SNS施策の設計
- 営業戦略の構築
WHY-WHAT-HOWとWHO-WHAT-HOWの違いは?
WHY-WHAT-HOWとWHO-WHAT-HOWの最大の違いは、「起点」が理念か顧客かという点だ。前者は「なぜやるのか」から始まり、後者は「誰に届けるか」から始まる。
以下の比較表で両フレームワークの違いを整理する。
| 比較軸 | WHY-WHAT-HOW | WHO-WHAT-HOW |
|---|---|---|
| 提唱者 | Simon Sinek(ゴールデンサークル) | マーケティング実務で広く使用 |
| 起点 | 理念・存在意義(WHY) | ターゲット顧客(WHO) |
| 目的 | ブランドの共感を生む | マーケティング戦略を設計する |
| WHATの意味 | 製品・サービスそのもの | 顧客への提供価値 |
| HOWの意味 | 差別化の方法 | チャネル・施策の選択 |
| 活用レイヤー | 経営・ブランド戦略 | マーケティング・営業戦略 |
| 時間軸 | 長期的(3〜10年) | 中短期的(3ヶ月〜1年) |
| アウトプット | ミッション、ブランドストーリー | ターゲット定義、施策計画、KPI |
注意:「WHAT」の意味が違う
特に注意すべきは、同じ「WHAT」でも両フレームワークでは意味が異なることだ。
- WHY-WHAT-HOWのWHAT → 「自社が何を提供しているか」(製品・サービスの説明)
- WHO-WHAT-HOWのWHAT → 「顧客が何の価値を得るか」(顧客ベネフィット)
前者は企業視点、後者は顧客視点。Theodore Levittはハーバード・ビジネス・レビュー誌の論文「Marketing Myopia」(1960年)で、企業が自社の製品(WHAT)に固執して顧客のニーズを見失う危険性を指摘した。鉄道会社が「自分たちは鉄道業だ」と定義したことで輸送ニーズを航空会社に奪われた、という有名な分析だ。WHATを企業視点のままにせず、顧客視点に変換する——それがWHY-WHAT-HOWからWHO-WHAT-HOWへの移行で起きることだ。
混同しやすい「WHAT」の違い
WHY-WHAT-HOWのWHATは「自社が何を提供しているか」(企業視点)。WHO-WHAT-HOWのWHATは「顧客が何の価値を得るか」(顧客視点)。同じ「WHAT」でも意味が根本的に異なる。
2つのフレームワークの正しい使い分け方は?
WHY-WHAT-HOWとWHO-WHAT-HOWは対立するものではなく、上流と下流の関係として組み合わせて使うのが正しい。
ステップ1:WHY-WHAT-HOWで「軸」を決める
まず経営レベルで「なぜこの事業をやるのか」を明確にする。これが全社の判断基準になる。
例: 「中小企業がマーケティングの専門知識がなくても、データに基づいた戦略を立てられるようにする」(WHY) → 「AIマーケティングツールを提供する」(WHAT) → 「対話型AIで専門知識の壁を取り除く」(HOW)
💡 実務Tips
WHYを定めたら「このWHYに最も共感してくれる人は誰か?」と問いかけてみよう。その答えがWHO-WHAT-HOWのWHO(ターゲット)の出発点になる。理念から顧客像への変換がスムーズになる。
ステップ2:WHO-WHAT-HOWで「戦略」を設計する
WHYで定めた軸を、具体的なマーケティング戦略に落とし込む。
例: 「マーケティング担当者がいない社員10名以下の中小企業経営者」(WHO) → 「30分で戦略の骨格が完成する手軽さと、専門家レベルの戦略品質」(WHAT) → 「Google検索経由のコンテンツマーケティング + 無料体験からの獲得」(HOW)
この2段階がうまく連動した例も紹介したい。ある地方の工務店を支援した際、まずWHYで「地域の暮らしを世代を超えて守る」というブランドの軸を固めた。次にWHO-WHAT-HOWで「築30年以上の戸建てに住む50代夫婦」をターゲットに定め、「老後も安心して住み続けられる耐震リフォーム」という価値を、地域情報誌とGoogleマップ経由で届ける戦略を設計した。理念が具体的な顧客像と結びついたことで、問い合わせの質が変わり、成約率が1.8倍に改善した。WHYだけでも、WHO-WHAT-HOWだけでも、この結果は出なかっただろう。
使い分けのフローチャート
| 今の状況 | 使うべきフレームワーク | 理由 |
|---|---|---|
| 事業の方向性が定まっていない | WHY-WHAT-HOW | まず「なぜやるか」の軸が必要 |
| 理念はあるがマーケ戦略がない | WHO-WHAT-HOW | 理念を顧客視点に変換する段階 |
| 両方とも明確 | 両方を見直す | 整合性が取れているか確認 |
| 施策を実行しているが成果が出ない | WHO-WHAT-HOW | WHO(ターゲット)がズレている可能性 |
私がMyMarketerで支援する企業の多くは、「WHYはある程度固まっているが、WHO-WHAT-HOWが曖昧」という状態だ。中小企業の場合、経営者の想い(WHY)は強いが、それをマーケティング戦略(WHO-WHAT-HOW)に変換するステップが抜けていることが多い。まさにこの変換をAIが支援するのがMyMarketerの役割だ。
使い分けの判断基準
「なぜこの事業をやるのか」が言語化できていなければWHY-WHAT-HOWから。理念はあるが「誰にどう届けるか」が曖昧なら、WHO-WHAT-HOWの設計に進もう。
ターゲット設定をさらに深掘りするなら戦略ターゲットとコアターゲットの違いが参考になる。独自のポジションを築く方法はハイグラウンド戦略で解説している。
WHY→WHO変換の問い5つ:理念を戦略に落とし込むチェックリスト
理念(WHY)が明確でもマーケティングが動かないのは、理念と顧客の間に「変換」のステップが欠けているからだ。以下の5つの問いに答えることで、WHYをWHO-WHAT-HOWに変換できる。
- その理念は「誰の」どんな課題を解決するのか?
理念を「受け取る側」の視点で言い換える。「地域の暮らしを守る」なら、守られるべき暮らしを送っているのは誰か。 - その「誰」の中で、最も切実にその課題を感じているのは?
全員に届けようとすると、誰にも届かない。痛みが最も大きい層を特定する。 - その人は今、課題をどう解決しようとしているか?
競合だけでなく、「何もしない」「自力で対処」も代替手段。現状の不満がWHATのヒントになる。 - その人にとって、自社の提供価値はどう独自か?
理念に共感する人が「ここでなければ得られない」と感じる要素を言語化する。 - その人に届けるチャネルと言語は何か?
50代経営者にTikTokは響かない。WHOが決まれば、HOWは自然と絞られる。
この5つの問いは、MyMarketerのAI対話でも実際に使っている設計プロセスだ。順番に答えるだけで、理念が「誰に・何を・どう届けるか」の戦略に変わっていく。
実践ツール: 変換した結果をWHO / WHAT / HOW 設計シートに書き出してみよう。WHYからWHOへの転換が1枚で確認できる。
よくある質問
Q1. WHY-WHAT-HOWだけでマーケティング戦略は完成するか?
A: 完成しない。WHY-WHAT-HOWは経営の軸であり、マーケティング戦略にはWHO-WHAT-HOWの設計が必要だ。
WHY-WHAT-HOWは「なぜこの事業をやるのか」「何を提供するか」「どう差別化するか」を定めるフレームワークであり、「誰に届けるか」の視点が抜けている。マーケティング戦略に必要な「ターゲット設定」はWHO-WHAT-HOWフレームワークで行う必要がある。
Q2. Simon Sinekのゴールデンサークルとは?
A: 「WHY→WHAT→HOW」の順で考えることで、共感と行動を生み出すリーダーシップ・ブランド構築の理論だ。
Simon Sinekが2009年のTEDトークで提唱した概念で、「人はWHATではなくWHYに共感して動く」という考え方だ。AppleやSouthwest Airlinesの事例で説明され、累計6,500万回以上再生された。著書『Start With Why』(Portfolio/Penguin、2009年)で理論の全体像が体系化されている。ブランディングや採用活動で特に効果的だが、マーケティング実務には別途WHO-WHAT-HOWの設計が必要だ。
Q3. WHO-WHAT-HOWのWHOを決めるにはどうすればいいか?
A: 既存顧客の分析と、「最も価値を感じてくれる層」の特定から始める。
WHOの設定は、年齢・性別のデモグラフィック情報だけでなく、「何に困っているか」「何を求めているか」という心理的な特性まで掘り下げることが重要だ。具体的には、既存顧客5人に「なぜ自社を選んだか」を聞くことで、共通するパターンが見えてくる。ペルソナ設定の具体的な手順はペルソナ設定のやり方とテンプレートで解説している。
Q4. 小さな会社でも両方のフレームワークを使うべきか?
A: はい。むしろ小さな会社ほど、限られたリソースを正しい方向に集中させるために両方の整理が必要だ。
大企業はリソースがあるため多少の戦略ミスをカバーできるが、中小企業は「誰に」「何を」「どう届けるか」を間違えると取り返しがつかない。WHYで事業の軸を定め、WHO-WHAT-HOWで具体的な戦略を設計することで、限られた予算と時間を最大限に活かせる。
Q5. WHY-WHAT-HOWフレームワークの具体例は?
A: Appleの例が最も有名。「テクノロジーで世界を変える(WHY)」→「iPhone(WHAT)」→「直感的なUI(HOW)」。
もう一つの例として、スターバックスは「人々の日常に潤いを届ける(WHY)」→「コーヒーと空間(WHAT)」→「サードプレイスとしての居心地の良い店舗設計(HOW)」と整理できる。日本の中小企業でも、「地域の食卓を守る(WHY)」→「産地直送の有機野菜(WHAT)」→「サブスクリプション配送(HOW)」のように活用できる。
WHYが「北極星」なら、WHO-WHAT-HOWは「航路図」。どちらが欠けても目的地にはたどり着けない。
まとめ:理念を戦略に変換する「橋渡し」がWHO-WHAT-HOW
WHY-WHAT-HOWフレームワークは「なぜやるのか」を起点にビジネスの軸を定める経営の枠組み、WHO-WHAT-HOWフレームワークは「誰に届けるか」を起点にマーケティング戦略を設計する実務の枠組みだ。
2つのフレームワークは対立するものではなく、「WHY-WHAT-HOW → WHO-WHAT-HOW」の順で使うことで、理念を具体的な戦略に変換できる。
理念はある。ミッションも言語化できている。であれば、次にやるべきことは一つ。WHOを定義するだけで、マーケティングは動き出す。
もし「WHYは明確だが、誰にどう届ければいいか分からない」という状態なら、MyMarketerでWHO-WHAT-HOWの戦略設計を無料で試してみてほしい。AIとの対話を通じて、あなたのWHYを具体的なマーケティング戦略に変換する手助けができるはずだ。
著者について

山本至人
200社以上の中小企業マーケティングを支援。WHO-WHAT-HOWフレームワークをAIに組み込んだMyMarketerの開発者。株式会社WHAT代表取締役。東京大学松尾研AI経営修了。法政大学法学部卒業。映像制作事業やDtoCアパレルブランドなど複数の新規事業立ち上げにCMOとして携わる。2023年株式会社WHAT設立。外部CMOサービスにて多くの企業のマーケティング支援を実施。東京大学松尾研AI経営修了。
- 株式会社WHAT 代表取締役
- 東京大学松尾研 AI経営寄付講座 修了
- 複数企業の外部CMOとしてマーケティング支援を実施










