コアターゲットとは?戦略ターゲットとの違いと「ぶれない」設定方法を4ステップで解説
マーケティング

コアターゲットとは?戦略ターゲットとの違いと「ぶれない」設定方法を4ステップで解説

山本至人
37分で読めます

NEXT STEP

ターゲット設定の次は、ペルソナ深掘りと実践ツールを見ます

ST/CTを理解したら、より具体的なペルソナ設計とAI活用で実行に移れます。

3秒でわかるコアターゲットとは

コアターゲット = 戦略ターゲット(ST)の中で「最も買ってくれる1人」を絞り込んだ顧客像。

STは「広く狙う攻めの範囲」、CTは「深く刺さる集中点」。STは長期固定、CTは短期で試行錯誤——この役割分担がぶれない設定の鍵です。

「ターゲットは決めてるのに、なぜか広告の反応がイマイチ......」その原因は、ターゲットを1つしか設定していないことかもしれません。

この記事でわかること

  • 戦略ターゲット(ST)とコアターゲット(CT)の違い
  • 2つを分けるだけで広告成果が変わる理由
  • 今日から使えるターゲット設定の4ステップ
  • CEP分析でターゲットの精度を上げる方法

コアターゲットとは?1分で分かる定義

コアターゲットとは、戦略ターゲット(ST)の中で「最も購買確率が高い1人」を具体化したターゲット像のことです。広く狙う層(ST)の中から、深く刺さる中心像(CT)を切り出すイメージです。

コアターゲットの3点まとめ

  • 定義: STの中で最も購買確率が高い理想の顧客像
  • 使う場面: コンテンツ設計・LP・CTA訴求・コピーライティング
  • 対比: 戦略ターゲット(ST)が「攻める範囲」、コアターゲット(CT)が「集中すべき1人」

「ターゲットを1つだけ決める」のとは違います。市場全体 → ST → CT と段階的に絞り込むことで、ブランド認知の広さと、購買訴求の深さの両方を確保できます。詳しい違いと使い分けは次節以降で解説していきます。


戦略ターゲットとコアターゲットの違いとは?

戦略ターゲット(ST)とコアターゲット(CT)の違いは、「広く狙う層」と「最も深く刺さる層」の区分にあります。

マーケティング戦略を立てるとき、「ターゲットは誰?」という問いに対して「30代女性」のようなざっくりした回答しかできないケースは少なくありません。しかし実務では、ターゲットを1つの層として扱うだけでは施策の精度が上がりません。戦略ターゲットは市場全体から選ぶ「攻める範囲」、コアターゲットはその中で最も購買確率が高い「集中すべき顧客像」です。この2つを正しく区別することで、限られた予算でも最大の成果を出すマーケティングが可能になります。

私がクライアント企業のマーケティング戦略を支援するなかで、最も多い失敗パターンが「ターゲットを1つしか設定していない」ことです。ある美容サロンのオーナーは「20〜40代の美容に興味がある女性」をターゲットに設定していましたが、広告費が分散して集客効率が上がりませんでした。戦略ターゲットとコアターゲットを分けて再定義したことで、限られた予算の配分が明確になり、3ヶ月で新規予約数が1.4倍に改善した経験があります。

この記事では、セグメンテーション・戦略ターゲット・コアターゲットの3層構造を具体例とともに解説し、あなたのビジネスですぐに使えるターゲット設定の実践手順を紹介します。

セグメンテーション・戦略ターゲット・コアターゲットの3層構造とは?

セグメンテーション→ST→CTの3層絞り込み図解

ターゲット設定の3層構造とは、市場全体を「セグメンテーション → 戦略ターゲット → コアターゲット」の順に絞り込む手法です。

この3層構造は、マーケティング理論で広く使われるSTP(Segmentation・Targeting・Positioning)をより実務的に拡張したフレームワークです。1つの「ターゲット」を2つの層に分けることで、「広くリーチする施策」と「深く刺す施策」を使い分けられるようになります。中小企業が限られた予算で最大のリターンを得るには、この使い分けが不可欠です。

定義具体例(パーソナルジム)施策の方向性
セグメンテーション市場を意味のある単位に分割健康・運動に関心がある20〜60代市場全体の把握
戦略ターゲット(ST)ビジネスが「攻める範囲」として選ぶ層30〜45歳・運動習慣なし・体型に悩みあり・都市部在住ブランド認知・広告配信
コアターゲット(CT)STの中で最も購買確率が高い「理想の1人」38歳男性・デスクワーク・健康診断で指摘・自己投資に前向き・平日夜に時間ありコンテンツ設計・CTA訴求

3層構造の関係性

セグメンテーションは市場全体を分ける作業です。その中から「自社の強みが活きる」かつ「十分な市場規模がある」セグメントを選ぶのが戦略ターゲット。さらに、戦略ターゲットの中で「最も反応しやすい」「LTVが高い」「口コミしてくれる」顧客像を具体化するのがコアターゲットです。

よくある間違いは、いきなりコアターゲットだけを設定してしまうことです。コアターゲットだけでは市場の広がりが見えず、成長の天井にぶつかります。逆に、戦略ターゲットだけでは施策が総花的になります。両方を設定してこそ、「広さ」と「深さ」のバランスが取れたマーケティングが実現します

よくある失敗は「ターゲットは20〜40代の女性」のような広すぎる設定と、「渋谷区在住の32歳独身女性」のような狭すぎる設定の両極端です。STで広さを確保し、CTで深さを担保する2層構造が、この問題を解決します。


STとCTの「役割の違い」— 長期×短期の二軸設計

STとCTを分ける本当の意味は、「広い/狭い」という大きさの違いだけではありません。狙う時間軸が違うのです。これに気づくと、施策設計が一気に整理されます。

戦略ターゲット(ST)コアターゲット(CT)
時間軸長期短期
目的ブランドの幅を狭めない/カテゴリ想起の獲得具体的に売上を作る/コンバージョンを取る
典型施策ブランド広告・SEO・PR・SNSフォロワー獲得LP・キャンペーン・限定オファー・体験申込
判断軸「将来の購買者を含めて広く認知できているか」「今、買ってくれる人にちゃんと刺さっているか」

クライアントワークでST/CTを使い分けて意外に効くのが、チーム内の議論が一気にしやすくなること。「これは長期のSTに向けたメッセージなので幅を残しましょう」「ここはCTに向けた獲得施策なので、ペルソナに刺さる尖った訴求にしましょう」と、目的別に判断軸を切り替えられます。

「STは固定、CTで試行錯誤」というアンカー設計

STとCTを分けておくと、もう一つ大事な効果が生まれます。ターゲットをむやみに変える必要がなくなること。

例えば、子供向けの習い事サービスなら、STは「習い事を検討している親」になることが多いはずです。その中で、CTを「共働き家庭の母親」「教育投資に積極的な父親」「祖父母世代」などに切り出していく。仮に最初に設定したCT(共働き家庭の母親)への施策がうまくいかなくても、ST(習い事を検討している親)の枠は変わりません。次のCT候補をST内で探せばいい、という構造になります。

これが何を生むかというと、クライアント・社内・自分自身、どの立場で見ても心理的に安定するのです。施策の度に「今度はこっちの層、次はあっちの層」とターゲットがコロコロ変わると、提案する側も提案される側も不安になります。「この会社はターゲットが定まっていない」「方針がブレている」と見えてしまう。

ST/CTを分けてあれば、そう見えません。「STは変えていない。STの中で、最も効くCTを探している」という説明が成立する。これが、長期と短期を二軸で握る本当の価値です。

💡 Tip: 提案資料や社内会議では、「STを変えるのか、ST内のCTを切り替えるだけなのか」を明示すると、議論が早く進みます。STを変える判断は半年〜1年単位、CTの切り替えは月〜四半期単位、というのが目安です。


戦略ターゲット(ST)の正しい設定方法は?

戦略ターゲットとは、自社が集中的にマーケティング投資を行う顧客層の範囲を定義するものです。

戦略ターゲットは「誰に売るか」ではなく、「どの市場を攻めるか」の意思決定です。人口統計だけでなく、行動特性やニーズの共通点で定義することが実務上のポイントになります。Byron Sharp(マーケティング科学の研究者)の著書『How Brands Grow』で示されたCategory Entry Points(CEP:ブランドを思い出すきっかけ)の考え方を取り入れると、より精度の高いST設定が可能です。

戦略ターゲット設定の3ステップ

  1. 市場をセグメントに分割する: 人口統計(年齢・性別・年収)、行動(購買頻度・利用チャネル)、心理(価値観・関心)の軸で分割
  2. 自社の強みが活きるセグメントを選ぶ: 市場規模・成長性・競合状況・自社リソースの4基準で評価
  3. CEPで検証する: 選んだセグメントが「どんな瞬間に自社カテゴリを想起するか」を8つ以上リストアップし、70%以上のカバレッジがあるか確認(Sharp, 2010のCEP理論をもとに、私が実務で検証した基準値)

ST設定の3ステップまとめ

(1)市場をセグメント分割 → (2)自社の強みが活きるセグメントを選定 → (3)CEPで70%以上のカバレッジを検証。この順序を守ることで、感覚ではなくデータに基づいたST設定ができます。

CEP(Category Entry Points)とは

CEPとは、消費者がカテゴリを思い出すきっかけとなる瞬間のことです。例えばパーソナルジムなら「健康診断で数値が悪かった」「結婚式が3ヶ月後に迫っている」「在宅勤務で体重が増えた」などがCEPにあたります。

戦略ターゲットを設定する際、CEPを8つ以上リストアップし、そのうち70%以上を自社の施策でカバーできるかを検証します。カバレッジが低い場合は、STの範囲が自社の強みと合っていない可能性があります。

CEPの例(パーソナルジム)想起されるかカバーできるか
健康診断で指摘を受けたはいはい(健康改善プログラム)
結婚式が近いはいはい(短期集中コース)
在宅勤務で運動不足はいはい(オンライン+対面)
友人がダイエットに成功したはいはい(紹介プログラム)
洋服が入らなくなったはいはい(体型改善実績)
子供の運動会で走れなかったはい一部(40代向け訴求)
夏までに痩せたいはいはい(季節キャンペーン)
医師から運動を勧められたはいはい(メディカル連携)

カバレッジ: 8/8 = 100% → STとして適切

このように、CEPを使って戦略ターゲットを「想起の瞬間」から検証する方法は、従来の人口統計ベースのターゲティングよりも実効性が高いアプローチです。


コアターゲット(CT)の設定方法は?心理因子と行動因子で深掘り

コアターゲットの心理因子×行動因子マトリクス

コアターゲットとは、戦略ターゲットの中で最も購買確率が高く、ブランドの中核となる理想の顧客像です。

コアターゲットの設定では、人口統計だけでなく心理因子と行動因子の両面からプロファイリングすることが重要です。「30代男性会社員」ではなく、「なぜ買うのか」「どう行動するのか」まで踏み込むことで、コピーライティングやクリエイティブの精度が飛躍的に向上します。

心理因子(なぜ買うのか)

コアターゲットの心理面を理解するために、以下の6つの因子を明確にします。

心理因子質問パーソナルジムの例
価値観何を大切にしているか?自己成長・健康的な生活
目標達成したいことは?体脂肪率20%以下・スーツが似合う体型
回避動機何を避けたいか?生活習慣病・体型を指摘されること
葛藤購入を迷う理由は?費用対効果・続けられるか不安
期待便益何を得たいか?自信・周囲からの評価・健康数値の改善
不安何が心配か?ハードなトレーニング・食事制限のストレス

行動因子(どう行動するのか)

心理因子だけでは施策に落とし込めません。行動因子を加えることで、チャネル選択や接触頻度の設計が可能になります。

行動因子質問パーソナルジムの例
購入頻度どのくらいのペースで購入するか?月額制で6ヶ月〜1年継続
情報探索の深さどこまで調べてから買うか?口コミサイト3件以上+体験レッスン参加
チャネル嗜好どのメディアを見ているか?Instagram・YouTube・Google検索
UGC(ユーザーが作るコンテンツ)参加度レビューやSNS投稿をするか?ビフォーアフター写真をInstagramに投稿
紹介行動他者に勧めるか?同僚に勧める傾向あり

CTプロファイリングの最低要件

心理因子(価値観・目標・回避動機・葛藤・期待便益・不安)から4つ以上、行動因子(購入頻度・情報探索・チャネル嗜好・UGC参加度・紹介行動)から2つ以上を特定すれば、施策に使えるCT像が描けます。

心理因子と行動因子を統合する

心理因子と行動因子をそれぞれ洗い出したら、次はこの2つを1人の顧客像として統合します。統合のコツは、「なぜ買うのか(心理因子)」と「どう買うのか(行動因子)」をストーリーとしてつなげることです。

コアターゲットのプロファイルシート例

統合した因子をもとに、以下のようなプロファイルを作成します。

佐藤健太(38歳) — IT企業の中間管理職。デスクワーク中心で運動習慣なし。健康診断で中性脂肪が基準値を超え、妻から「このままだと心配」と言われたことがきっかけ。自己投資には前向きだが、仕事が忙しく「週2回通えるか」が最大の葛藤。Instagramでビフォーアフター写真を見て情報収集し、Google検索で「パーソナルジム 初心者 30代」と検索。体験レッスン後、口コミサイトのレビューを3件以上確認してから入会を決める。成果が出れば同僚にも勧めるタイプ。

このレベルまで具体化すると、「健康診断で指摘を受けたデスクワーカー向け・週2回でOK・初心者歓迎」という訴求メッセージが自然に導き出せます。


戦略ターゲットとコアターゲットの使い分け方は?

ST/CT施策フェーズ使い分け図解

戦略ターゲットとコアターゲットは、マーケティング施策のフェーズによって使い分けるのが正解です。

両方を設定しても、「じゃあ実務でどう使うの?」という疑問が残ります。結論から言えば、認知施策はSTに向けて、獲得施策はCTに向けて設計するのが基本の考え方です。これはLes BinetとPeter Fieldの研究『The Long and the Short of It』(IPA, 2013)で示された「60:40ルール」(ブランド広告と販促広告の最適比率で、ブランド構築60%・販促活動40%の予算配分が最も効果的とされる法則)とも整合します。

施策フェーズ対象具体的な施策例
認知(ブランド構築)戦略ターゲットSNS広告・SEO記事・PR・YouTube
興味・検討ST → CTの中間リターゲティング広告・メールマガジン・比較コンテンツ
獲得(コンバージョン)コアターゲットLP・無料体験・個別相談・事例紹介
継続・紹介コアターゲットカスタマーサクセス・紹介プログラム

実践例:飲食店のST/CT使い分け

ある地方の定食屋が「昼の客数を増やしたい」と相談に来たケースで考えてみましょう。

  • ST: 半径2km圏内の会社員・公務員(昼休み1時間以内に来店可能)
  • CT: 30〜40代男性・毎日ランチ外食・「早い・安い・ボリューム」重視・同僚と来店

STに向けた認知施策として、Googleマップの最適化(MEO)と近隣オフィスへのポスティングを実施。CTに向けた獲得施策として、「12時までの入店で味噌汁無料」という時短インセンティブと「大盛り無料」のボリューム訴求をメニュー表に追加しました。

STとCTを分けたことで、「どこに広告を出すか」と「何を訴求するか」が別々に設計でき、施策の無駄が減ったのがポイントです。

ST/CTの2層を分けて設計するだけで、「広告はSTに向けて認知を取る」「LPはCTに向けて刺す」という役割分担が自然にできます。施策の目的が明確になるため、効果測定もしやすくなります。


「ターゲットがコロコロ変わる」を防ぐ心理的アンカーの作り方

マーケティング施策の打ち合わせで、こんな場面を見たことはないでしょうか。「先月は30代女性向けに広告を打ったが反応が悪かったので、来月は40代男性に変えよう」。半年後には「やっぱり最初の30代女性に戻そう」。担当者もクライアントも、なぜか焦っているような空気が漂う。

これ、ターゲットを「1階層しか持っていないから」起きているのです。ST/CTの2階層で持っていれば、こうはなりません。

1階層運用の典型的な落とし穴

状況1階層運用での反応2階層運用での反応
初期CTで反応が出ない「ターゲット間違ってた?」と全否定 → 別ターゲットへ「ST内で別のCTを探そう」と部分修正
クライアントから不満「方針がブレてる」と見える「STは固定、CTを切り替え」と説明可能
施策の継続判断感覚的に判断 → 施策ごと変わるSTの認知資産は維持しつつCTを最適化
チーム内の認識「結局誰向けだっけ?」がループ「STは◯、CTは◯」と階層で揃う

STを「変えるべき時」の判断基準

「STも変えるべきタイミングはあるのでは?」と聞かれることもあります。あります。ただし、頻度は低いほうが健全です。STを変えるべきタイミングは、次の3つに限ります。

  1. 事業のステージが変わった: 個人事業から法人化、地域拡大、新規事業の追加など。市場そのものが拡張・変化したとき
  2. 市場環境が大きく動いた: 競合の構造変化、規制変更、テクノロジーシフト等で、想定していたCEPが機能しなくなったとき
  3. ST内のどのCTでも結果が出ない: 複数のCTを試した結果、ST全体としての反応が弱いことが見えたとき

逆に言えば、上記以外でSTをいじるのは、ほぼ「焦り」が原因です。STは半年〜1年単位で固定する、というルールを社内とクライアントの双方で握っておくと、ぶれにくくなります。

⚠️ 注意: STを頻繁に変えると、ブランドの一貫性が壊れます。広告のクリエイティブ、Webサイトのトーン、SEOで狙うキーワード——これらは全てSTから派生して設計されているため、STが揺らぐと全部が揺らぎます。CTを切り替える分には影響範囲が限られるので、迷ったら「これはCT変更で済むのか、ST変更が必要なのか」を最初に問うのがおすすめです。


ペルソナ設定との違いは?

ペルソナ設定は、コアターゲットをさらに具体的な「架空の人物像」として描く手法です。コアターゲットの延長線上にあるツールであり、別物ではありません。

ペルソナとコアターゲットの違いに悩む方は多いですが、実務では以下のように整理するとスムーズです。コアターゲットが「条件の集合」であるのに対し、ペルソナは「名前と顔がある1人の人物」として描写する点が異なります。

項目コアターゲットペルソナ
抽象度やや抽象的(条件の集合)具体的(1人の人物像)
使う場面戦略設計・予算配分クリエイティブ制作・コピーライティング
記述形式箇条書き・表形式ストーリー・プロフィール形式
更新頻度半年〜1年ごとプロジェクトごと

中小企業の場合、コアターゲットの設定だけで十分なケースも多いです。チーム内で「この施策は誰に向けたもの?」が共有できていれば、必ずしも詳細なペルソナシートを作る必要はありません。ただし、外部のライターやデザイナーに依頼する際は、ペルソナまで作成したほうがクリエイティブの精度が上がります。

実際、私が支援したあるEC事業者では、コアターゲットの条件リスト(箇条書き)だけを社内共有してLP制作を依頼したところ、デザイナーが「もっと若い層」をイメージしてしまい、トーンがずれたクリエイティブが納品されました。後からペルソナシート(名前・生活シーン・購買のきっかけを含む)を追加で共有したことで、2回目の制作ではCVRが1.8倍に改善しています。

コアターゲットで十分なケース:

  • 社内のマーケ担当者が1〜2名で、施策の意思疎通が簡単
  • テキストベースの施策(SEO記事・メルマガ)が中心

ペルソナまで必要なケース:

  • 外部パートナー(制作会社・広告代理店)に依頼する
  • ビジュアル重視の施策(動画・LP・SNSクリエイティブ)がある
  • チームメンバーが5名以上で認識のズレが起きやすい

ペルソナ設定のやり方|テンプレート付き完全ガイドの記事で、具体的なペルソナ作成テンプレートを公開していますので、あわせて参照してください。


3層構造でターゲット設定する4ステップは?

ターゲット設定の3層構造は、以下の4ステップで実践できます。

「理論はわかったけれど、自分のビジネスにどう当てはめればいい?」という疑問に応えるため、中小企業でも30分で完了する実践手順を紹介します。

ステップ1: セグメンテーション(5分)

自社の顧客データまたは市場データをもとに、以下の3軸で市場を分割します。

  • 人口統計軸: 年齢・性別・年収・居住地・職業
  • 行動軸: 購買頻度・利用チャネル・購入金額帯
  • 心理軸: 価値観・ライフスタイル・購買動機

データがない場合は、既存顧客の上位10名を思い浮かべ、共通点を3つ書き出すだけでも十分です。

ステップ2: 戦略ターゲット選定(10分)

分割したセグメントから、以下の4基準で攻めるべき層を選びます。

評価基準質問判定
市場規模十分な顧客数がいるか?年商目標の3倍以上の市場規模
成長性今後伸びるか?横ばい以上ならOK
競合状況勝てる余地はあるか?圧倒的な大手がいなければOK
自社適合性自社の強みが活きるか?既存顧客の満足度が高い領域

ステップ3: コアターゲット深掘り(10分)

STの中で「最も買ってくれそうな人」を、心理因子6つ+行動因子5つで具体化します(前述の表を参照)。

コツ: 既存の優良顧客を1人思い浮かべ、その人の「なぜ買ったのか」「どう買ったのか」を書き出すと、リアルなコアターゲット像が描けます。

ステップ4: CEP検証(5分)

設定したSTが「どんな瞬間に想起されるか」をCEPとして8つ以上リストアップし、70%以上カバーできるかを確認します。カバレッジが低ければ、STの範囲を調整します。

実践ツール: ペルソナ設計シートで、STとCTの違いを書き出してみよう。属性だけでなく、課題や意思決定プロセスまで深掘りできる。


ST/CT設定でやりがちな失敗3つ

ターゲット設定を実際にやると、必ず詰まるパターンがあります。事前に知っておくと、迷い時間が減ります。

失敗1:ターゲットを1つしか持たず、CTを試しては丸ごと捨てる

最も多い失敗パターン。「ターゲット = 30代女性」という1階層だけで運用してしまうケースです。CTで結果が出ないとき、ターゲット全体を否定して別の層に乗り換えてしまう。毎回ゼロからやり直しになるので、認知資産も施策の学びも蓄積されないのが問題です。

対処:必ずSTを先に決め、その下にCTを置く2階層構造で持つ。CTがダメでもSTは動かさないというルールを徹底する。

失敗2:STを抽象的にしすぎて、CTが切り出せない

「ST = 健康に関心のある人」「ST = ビジネスに前向きな人」のように、抽象度が高すぎて誰でも当てはまるSTを作ってしまうケース。これだとCTを具体化しようとしても、STとの線が引けません。

対処:STは「セグメンテーション軸(年齢・職業・ライフステージ等)+ ニーズ軸(具体的な状況や課題)」の2軸でセットにする。例:「ST = 30〜45歳 × 運動習慣がない × 健康診断で指摘された」。これくらいの解像度があれば、CTを切り出す余地が生まれます。

失敗3:CTを「自分が売りたい人」で決めてしまう

事業者あるあるです。「自分はこういう人に売りたい」という願望ベースでCTを決めてしまう。願望と購買確率は一致しないことが多いので、施策が空振りします。

対処:既存の優良顧客(売上TOP10〜20)をリストアップし、共通点をデータで抽出する。願望ではなく実績ベースで「すでに買ってくれている人」を起点にCTを設計します。事業初期で顧客がまだ少ない場合は、競合の口コミ・レビューサイト・SNS投稿から「実際に買っている人の像」を拾うのが有効です。

3つの失敗を避ける合言葉

「STとCTを2階層で持つ」「STは具体性を持たせる」「CTは願望ではなく実績で決める」。この3つだけ守れば、ターゲット設定の8割は成功します。


よくある質問

Q: 戦略ターゲットとコアターゲット、どちらを先に決めるべきですか?

戦略ターゲットを先に決めるのが正しい順番です。コアターゲットは戦略ターゲットの中から抽出する「部分集合」なので、先にSTで攻める範囲を決めてから、CTで集中すべき顧客像を具体化します。

Q: 中小企業でもST/CTの2層に分ける必要はありますか?

はい、むしろ中小企業こそ必要です。予算が限られているからこそ、「広く認知を取る施策」と「深く刺す施策」を明確に分けることで、1円あたりの効果を最大化できます。私がこれまで支援した中小企業15社の実績データを集計すると、ST/CTを2層に分けて施策を設計した企業は、ターゲットを1層のみで運用していた時期と比較して顧客獲得コストが平均20〜30%改善しています。特に月間広告費50万円以下の企業ほど改善幅が大きい傾向がありました。

Q: BtoBビジネスでも3層構造は使えますか?

使えます。BtoBの場合は以下のように読み替えてください。

  • セグメンテーション: 業界・企業規模・課題タイプで分割
  • ST: 攻める業界×企業規模×課題の組み合わせ
  • CT: 意思決定者の役職・KPI・購買プロセスの特徴

Q: コアターゲットとは何ですか?短く教えてください

コアターゲットとは、戦略ターゲット(ST)の中で「最も購買確率が高い1人」を具体化したターゲット像のことです。STが「攻める範囲」、CTが「集中すべき1人」と理解すると整理しやすくなります。CTは心理因子と行動因子で深掘りして、コピーライティングやLP設計の中心に置きます。

Q: STとCTを使い分けると、なぜチーム内の議論が揃うのですか?

議論の対象が「ターゲットそのもの」から「STに対する施策か、CTに対する施策か」に変わるからです。1階層運用だと「ターゲットを変えるかどうか」の二項対立になりがちですが、2階層運用だと「STは固定したまま、CTをどう切り替えるか」「STを見直すべきタイミングか」など議論の粒度が細かくなり、論点が整理されます。結果として、チーム内の認識のブレが減り、提案する側される側の心理的安定にもつながります。

Q: STをどのくらいの頻度で見直すべきですか?

原則として半年〜1年単位での見直しが目安です。STを頻繁に変えるとブランドの一貫性が壊れるため、変えるべきタイミングは「事業ステージが変わった」「市場環境が大きく動いた」「ST内のどのCTでも結果が出ない」の3つに限るのが安全です。CTの切り替えはもっと早くて構いません(月〜四半期単位)。

まとめ:ターゲット設定は「3層構造」で精度が変わる

戦略ターゲットとコアターゲットの違いは、「攻める範囲」と「集中すべき顧客像」の区分です。この2つを正しく設定することで、限られた予算でも効果的なマーケティングが実現します。ターゲット設定を含むマーケティング戦略の全体像はWHO-WHAT-HOWフレームワーク完全ガイドで解説しています。

3層構造のポイント:

  • セグメンテーション: 市場を分割して全体像を把握する
  • 戦略ターゲット(ST): CEPでカバレッジ70%以上を確認しながら「攻める範囲」を決める
  • コアターゲット(CT): 心理因子×行動因子で「理想の1人」を具体化する
  • 使い分け: 認知施策はSTに、獲得施策はCTに向けて設計する
  • 長期×短期の二軸: STはブランドの幅を狭めない長期視点、CTは具体的な売上を取りにいく短期視点で設計する
  • STは固定、CTで試行錯誤: ターゲットがコロコロ変わって不安になる状態を防ぐアンカー設計

2階層で持っておくと、施策がうまくいかなかった時に「ターゲットごと変える」のではなく「ST内で別のCTを探す」という柔軟な対応が可能になります。これがマーケティングの一貫性を保ちながら、PDCAを回し続けるための土台です。

「自社のターゲットを3層構造で整理したいけれど、どこから手をつければいいかわからない」という方は、MyMarketerのWHO設定機能を試してみてください。AIがあなたのビジネス情報をもとに、CEP分析つきの戦略ターゲットとコアターゲットを30分で自動生成します。

AIを活用してターゲット設定を効率化する方法はAIマーケターでできることで解説している。マーケティングにかけられる時間が限られている方は一人社長のマーケティングも参考になる。

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著者について

山本至人

山本至人

200社以上の中小企業マーケティングを支援。WHO-WHAT-HOWフレームワークをAIに組み込んだMyMarketerの開発者。株式会社WHAT代表取締役。東京大学松尾研AI経営修了。

法政大学法学部卒業。映像制作事業やDtoCアパレルブランドなど複数の新規事業立ち上げにCMOとして携わる。2023年株式会社WHAT設立。外部CMOサービスにて多くの企業のマーケティング支援を実施。東京大学松尾研AI経営修了。

  • 株式会社WHAT 代表取締役
  • 東京大学松尾研 AI経営寄付講座 修了
  • 複数企業の外部CMOとしてマーケティング支援を実施

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マーケティングAI

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AIマーケターの中身を開発者が全公開。月30万円のCMO業務をAIに移植した経緯、Byron Sharp理論・CEPカバレッジ70%基準・5人AIチーム討論・品質ガードレールの設計思想を解説。