
コアターゲットとは?戦略ターゲットとの違いと「ぶれない」設定方法を4ステップで解説
コアターゲットとは、戦略ターゲット(ST)の中で、予算や施策を重点的に向ける顧客層です。STが「事業として応えたい顧客の範囲」、CTが「その中で、今どこに力をかけるか」を表します。1人の人物像として描くペルソナとは区別します。
たとえば飲食店なら、「近隣で平日の昼食を外で取る人」をSTにし、その中の「昼休みが短く、待ち時間を避けたい人」をCTの候補にできます。年齢や性別を細かく決めるより、どんなときに何を選びたい人なのかを確かめる方が、メニューや案内を考えやすくなります。
この記事では、STとCTの違い、ペルソナとの関係、設定の4ステップと、結果が出ないときに見直す箇所を説明します。例は考え方を示すための架空例で、店舗の実績ではありません。
コアターゲットと戦略ターゲットの違いは?
違いは、対象の広さだけでなく、資源をどこへ配分するかにあります。STを定めておけば、CTに向けた一つの施策がうまくいかなかったときも、事業全体の対象を変える必要があるのか、同じ範囲内で重点を変えるのかを分けて考えられます。
| 項目 | 戦略ターゲット(ST) | コアターゲット(CT) |
|---|---|---|
| 決めること | マーケティングの対象にする顧客の範囲 | その中で、予算や施策を重点的に向ける顧客層 |
| 確認する材料 | 需要の広がり、自社の提供条件、競合、採算 | 選定理由、購入場面、提供できる価値、接点と費用 |
| 飲食店の架空例 | 近隣で平日の昼食を外で取る人 | 昼休みが短く、注文から食事までの待ち時間を避けたい人 |
| 見直すとき | 市場・提供範囲・採算の前提が変わったとき | 重点を置く理由が顧客の記録や施策結果と食い違ったとき |
ウェブ解析士協会の公式解説でも、CTはSTの中でさらにマーケティング予算を集中投下するターゲットとして説明されています。「最も買いそうな1人」を想像することと、重点を置く顧客層を選ぶことは同じではありません。
また、STを認知広告だけ、CTを購入広告だけに割り当てる決まりもありません。同じCTに対して、サービスを知ってもらう接点と、購入前の不安を解く接点の両方が必要な場合があります。施策は、その人がどこで検討を止めているかから考えます。
セグメンテーション・ST・CTの3層で整理する
セグメンテーションは、課題や購入場面などの違いから市場を分ける作業です。その区分を見ながら事業として狙う範囲をSTにし、資源を重点的に使う顧客層をCTにします。STPのポジショニングを、この3層だけで済ませられるわけではありません。
| 整理するもの | パーソナルジムの架空例 | 次に確かめること |
|---|---|---|
| セグメントの候補 | 運動不足を解消したい人/競技力を高めたい人/短期の目標がある人 | 相談や購入記録に、どんな目的の違いがあるか |
| ST | 通える範囲に住み、運動習慣を作りたい人 | 対応できる指導内容と営業時間、通える距離、需要と採算 |
| CTの候補 | デスクワーク中心で体力低下を感じ、平日夜に通いたい人 | 夜の予約枠、通えない理由、比較したジム、体験後に続ける条件 |
この例で「38歳男性」まで狭めても、それだけで選ばれる理由は分かりません。予約枠が昼しか空いていないなら、夜に通いたい層を重点対象にしても約束を守れません。顧客の希望と提供できる条件を一緒に確認します。
比較相手を調べる段階では、競合分析のフレームワークと記入例を使えます。直接の競合だけでなく、独学、別のサービス、今のまま続ける選択肢も比べます。
コアターゲットとペルソナの違いは?
コアターゲットは、重点的に働きかける顧客層を条件で表したものです。ペルソナは、その層の状況を共有するために、1人の人物像として描く方法です。
「体力低下を感じ、平日夜に通いたいデスクワーカー」はCTの候補です。それを説明するために、架空の会社員について、検討を始めた出来事、比較先、通う時間を描くとペルソナになります。名前や年齢を付けただけでは、需要や購買確率の根拠にはなりません。
制作担当者へ伝えるときは、人物の設定と、その設定に使った顧客の記録を分けます。「忙しいから短い説明を好む」という推測だけで、料金や通い方の説明まで削らないようにしてください。
人物像の記入方法はペルソナ設定のやり方とテンプレート、書き出すときはペルソナ設計シートが使えます。CTの条件だけで仕事の対象が共有できるなら、詳細な人物像を毎回作る必要はありません。
コアターゲットを設定する4ステップ
1.顧客の課題と購入場面から、市場を分ける
問い合わせ・購入・失注・解約の記録を並べ、何を解決したくて検討したのか、何と比較したのかを整理します。年齢や職業は、提供条件や選び方との関係がある場合に使います。
たとえば「運動したい」という相談でも、通う習慣を作りたい人と、競技の成績を上げたい人では必要な指導が違います。記録のない部分は仮説として残し、既存顧客だけで市場全体を説明しないようにします。
2.自社が応えられる範囲をSTにする
候補ごとに、顧客の必要性、自社の提供能力、需要の広がり、利益が残る条件を比べます。市場が大きくても、自社が扱えない仕事なら対象にはできません。得意な仕事でも、必要な顧客が少なすぎれば売上目標との整合を確認します。
残すものは、「誰のどんな課題に応えるか」「どの条件では対応できないか」と、その判断に使った記録です。事業全体の整理から始めたい場合は、中小企業のマーケティング戦略の作り方を先に確認してください。
3.重点を置くCTの候補を比較する
STの中で、どの層へ先に予算や人の時間を使うかを決めます。困りごとの切実さだけでなく、自社の価値が選ばれる理由、接点を作れるか、提供負担と採算も見ます。買いそうでも、対応できない条件を求める層なら重点対象には向きません。
| 確認するもの | 聞く・調べる内容 | 施策への使い方 |
|---|---|---|
| 心理 | 達成したいこと、迷う理由、選ぶ条件 | 何を説明し、どの不安に答えるかを決める |
| 行動 | 比較先、調べた場所、購入・離脱した場面 | 接点と、検討が止まる箇所を確認する |
| 提供条件 | 担当、時間、費用、品質、受けられない仕事 | 訴求で約束できる範囲を決める |
発言と行動が食い違うときは、その理由を調べます。「安さが大切」と話した人が、納期を優先して高い案を選ぶこともあります。項目を何個埋めたかより、今回の仕事でどの条件が判断を変えるかを明確にします。
4.購入場面に合う一つの施策で確かめる
CTの仮説から、変える内容と確認する結果を一つの仕事にまとめます。ジムの架空例なら、夜に通いたい人へ実際の予約枠と通い方を説明し、体験予約だけでなく「希望する時間に通えるか」を確認します。
カテゴリへの購入を考えるときに生じる思考や状況は、CEP(Category Entry Points)を考える材料になります。「運動不足に気づいた」「来月の予定に向けて準備したい」といった場面です。Ehrenberg-Bass InstituteのCEPの解説も参考になります。
AIや社内で思いついた候補だけで、需要を確認したことにはしません。相談記録と照合し、実施前に対象、確認日、使える費用、何を成果として数えるかを決めます。反応が少なければ判断を保留し、費用上限を守りながら追加で確かめます。
決めたターゲットを、戦略に落とし込む
飲食店のST・CTは、どう施策に変わる?
先ほどの架空例を続けます。STは「近隣で平日の昼食を外で取る人」、CT候補は「昼休みが短く、待ち時間を避けたい人」です。
ここから、すぐに値引きを決める必要はありません。まず昼の注文と提供にかかる時間、混む時間帯、持ち帰りへの対応を確認します。12時前に来ても提供が遅いなら、「早い昼食」という訴求はまだ使えません。
| 確認できた条件 | 試す案 | 実施後に見る結果 |
|---|---|---|
| 事前注文を受け、指定した受取時間に用意できる | 昼休み前に注文できる持ち帰りメニューを案内する | 予約数、受取時の待ち時間、提供の遅れ、利益と仕込みの負担 |
| 混雑時は時間を約束できない | 注文しやすい定番メニューと、混む時間帯の目安を案内する | 注文で迷う時間、来店・注文の反応、現場の負担 |
「CTを分けたから売上が増えた」という実績例ではありません。重点顧客の困りごとから、提供できる内容を選ぶ例です。Googleマップ、店頭、近隣への案内などの接点は、顧客が店を探す場面と実行費用に合わせて選びます。
反応が悪いときは、STとCTのどちらを見直す?
一つの広告に反応がないだけで、ST全体を変えるのは早い場合があります。対象へ届いていない、提供条件が合わない、説明が足りない、計測が取れていない、といった原因を先に確認します。
| 起きていること | 先に調べるもの | 次の判断 |
|---|---|---|
| 見られていない | 配信・掲載状況、接点、取得失敗 | 対象の不適合と決めず、届く条件を整える |
| 見られるが検討されない | 困りごとの有無、選ぶ理由、料金・利用条件の説明 | CTや提供価値の仮説、説明を見直す |
| 相談は来るが提供できない | 求められた条件と、自社の対応範囲 | CTの条件またはサービスの提供体制を直す |
| 複数の試行でも需要・採算が成り立たない | STの需要、競合、自社の能力、試した条件 | STの範囲を見直す根拠として検討する |
STは永久に固定するものでも、CTは短期間で必ず切り替えるものでもありません。市場、選定理由、対応できる仕事、採算の前提が変わったときは、対象の範囲も見直します。会議では「STを変えるのか、同じSTの中で重点を変えるのか」を分けて説明すると、変更理由を共有しやすくなります。
作業を速くしたのに成果につながらない場合は、AIで効率化しても成果が出ない理由も確認してください。実行速度と、顧客・提供価値の仮説が合っているかは別の問題です。
コアターゲット設定のよくある質問
STとCTはどちらを先に決めますか?
まず事業として応える範囲をSTとして確認し、その中の重点対象をCTにすると整理しやすくなります。すでに良い顧客の記録があるなら、その条件から範囲を検討する方法もあります。どちらから始めても、提供できる条件と需要・採算を照合します。
小さな会社でも2層に分ける必要がありますか?
書類を増やすことが目的ではありません。「対象全体」と「今回の重点」が同じなら、その理由を説明できれば十分です。複数のサービスや施策の対象が混ざり、予算配分で迷う場面では、STとCTを分けると判断しやすくなります。
BtoBではどう設定しますか?
企業の条件と、実際に検討・利用・決裁する人を分けます。たとえば対応できる企業規模や課題をSTとして確認し、その中で導入時期や運用体制が合う企業群へ重点を置きます。担当者だけに価値が伝わっても決裁が進まないなら、決裁者が必要とする費用や実行条件の説明も用意します。
コアターゲットは1人に絞るのですか?
CTは重点的に働きかける顧客層です。1人の人物像は、その層の状況を共有するペルソナとして使えます。架空の1人に細かい設定を足しても、重点対象を選ぶ根拠にはなりません。
まずは、対象の範囲と今回の重点を書き分ける
STには「事業として誰のどんな課題に応えるか」、CTには「今回どの層へ重点的に資源を使うか」を書いてみてください。その理由となる顧客の記録と、対応できない条件も添えます。次に、何を試し、どの結果で続ける・直す・見送るかを決めます。
価値と施策までつなげるにはWHO-WHAT-HOWの全体ガイドへ。顧客像を制作担当者へ渡す段階ではペルソナ設定を記入例で進める方法が参考になります。
資料の整理や制作をAIへ任せる範囲はAIマーケターでできることで、少人数で仕事の優先順位を付ける進め方は一人社長のマーケティングで説明しています。対象を考える仕事と、決めた内容を実行する仕事をつなげて進めます。
著者について

山本至人
200社以上の中小企業マーケティングを支援。WHO-WHAT-HOWフレームワークをAIに組み込んだMyMarketerの開発者。株式会社WHAT代表取締役。東京大学松尾研AI経営修了。法政大学法学部卒業。映像制作事業やDtoCアパレルブランドなど複数の新規事業立ち上げにCMOとして携わる。2023年株式会社WHAT設立。外部CMOサービスにて多くの企業のマーケティング支援を実施。東京大学松尾研AI経営修了。
- 株式会社WHAT 代表取締役
- 東京大学松尾研 AI経営寄付講座 修了
- 複数企業の外部CMOとしてマーケティング支援を実施




